紙カルテを電子化する手順:移す範囲の決め方・チェックリスト・個人情報の扱い(サロン向け)

撮影用のスタンドに付けたタブレットの下に紙のカルテを置き、撮り終えた束を保管箱へ移している電子化の作業の手元

サロンの紙カルテを電子化するときは、全部を一度に入力しようとしないことが大切です。棚卸し→移す範囲を決める→項目を決める→データ化の方法を選ぶ→並行期間→紙の保管と廃棄の6つの手順で進めると、営業を止めずに移れます。多くの店では、最近来店したお客様の分だけを先に移し、それ以外はお客様が次に来店したときに入力する方法が現実的です。この記事では、各手順で決めること、移行のチェックリスト、個人情報の扱い、電子カルテを選ぶときに移行の面で確かめることを順に説明します。

紙カルテを電子化する前に決めておくこと

紙カルテの電子化でつまずきやすいのは、「全部を移さないといけない」と考えて、入力の量に手が止まってしまうことです。電子化の目的は、過去の紙を残らずデータにすることではありません。これから来るお客様の施術に必要な情報を、探しやすく、ほかのスタッフとも共有できる形にすることです。

そこで、始める前に次の2つを決めておきます。1つ目は、電子化で解決したいことです。「前回のカルテを探す時間を減らしたい」「複数のスタッフや店舗で同じお客様の記録を見たい」「ご来店のきっかけを集計したい」など、目的によって移す範囲と項目が変わります。2つ目は、移行の担当者と終わりの時期です。担当を決めずに「手の空いた人が入力する」とすると、たいてい途中で止まります。

紙と電子のどちらが店に合うかを先に比べたい場合は、サロンのカルテ テンプレートの「紙のカルテと電子カルテの比較」を参考にしてください。カルテだけでなく予約や会計も含めて何から仕組みにするかは、サロン・店舗のDXは何から始めるかで整理しています。

紙カルテを電子化する6つの手順

全体の流れは次のとおりです。手順1〜3は準備で、営業中の作業はほとんどありません。手順4〜6は、営業と並行して進めます。

手順やること決めること・作るもの
1. 棚卸し紙カルテの枚数と状態を数える最終来店日ごとの枚数、読めないカルテの数
2. 移す範囲を決めるどのお客様の分を移すかを決める移す・来店時に移す・移さない、の3つの区分
3. 項目を決める紙の項目と電子カルテの項目を対応させる項目の対応表、必ず移す項目の一覧
4. データ化の方法を選ぶ入力・スキャン・来店時の入力から選ぶ方法ごとの担当、ファイル名などのルール
5. 並行期間紙と電子を一緒に使う期間を設ける期間の長さ、移した紙の印、システムが使えないときの手順
6. 紙の保管と廃棄移した紙をしまい、期間が過ぎたら廃棄する保管の場所と鍵、廃棄までの期間、廃棄の記録

次の図は、上の表の 6 つの手順を、準備の手順と営業と並行する手順に分けて、流れにしたものです。

紙カルテを電子化する 6 つの手順の図。紙カルテの枚数と状態を数える棚卸し、移す範囲を決める、紙と電子カルテの項目を対応させる、入力・スキャン・来店時の入力からデータ化の方法を選ぶ、紙と電子を一緒に使う並行期間を設ける、移した紙を保管し期間が過ぎたら廃棄する。手順 1〜3 は準備、手順 4〜6 は営業と並行して進める。

手順1:紙カルテを棚卸しする

まず、手元に紙カルテが何枚あり、どんな状態かを数えます。数えるときは、最終来店日で分けておくと、手順2で移す範囲を決めやすくなります。

数えておきたいのは次の点です。

  • 紙カルテの総数と、保管している場所(棚、箱、別の店舗など)
  • 最終来店日ごとの枚数(例:1年以内、1〜3年、3年より前)
  • 回数券やコースの残りがあるお客様の数
  • アレルギーやかぶれなど、施術の安全に関わる記録があるお客様の数
  • 個人情報の取り扱いや写真の記録について、同意欄に記入があるかどうか
  • 字がかすれている、書き方が人によって違うなど、読みにくいカルテの数

すべてを1枚ずつ見る時間がなければ、引き出し1つ分など一部を見て、全体の割合を見積もる方法でも構いません。

手順2:移す範囲を決める

棚卸しの結果をもとに、カルテを3つの区分に分けます。

区分対象の例扱い
先に移す最近来店したお客様、次の予約が入っているお客様、回数券の残りがあるお客様、アレルギーなどの記録があるお客様移行の初めにまとめてデータ化する
来店したときに移すしばらく来店していないが、また来る可能性があるお客様予約が入ったら、来店の前にデータ化する
移さない長く来店がなく、店で決めた保管の期間を過ぎたお客様手順6のルールに沿って保管し、期間が過ぎたら廃棄する

「最近」を何か月以内とするかは、業種の来店の間隔に合わせて決めます。来店の間隔が1〜2か月の店と、半年に1回の店では、同じ期間では意味が変わるためです。迷ったら、通常の来店の間隔の2〜3回分を目安にして、あとで広げても構いません。

アレルギーや服用中の薬、かぶれた経験などの記録は、区分にかかわらず優先して移します。施術の安全に関わる情報が、紙にだけ残っている状態を早くなくすためです。

手順3:項目を決める

次に、紙の項目を電子カルテのどの項目に入れるかを決めます。紙カルテの項目は店ごとに違い、書き方もスタッフによってばらつきがあります。対応表を作っておけば、入力する人が変わっても同じ場所に同じ情報が入るでしょう。

紙カルテの項目電子カルテでの扱い移すときの注意
お名前・ふりがな・電話番号顧客の基本情報電話番号で同じお客様の重複がないか確かめる
アレルギー・服用中の薬・かぶれた経験注意事項の欄(施術の前に目に入る場所)記入した日付も残す
ご来店のきっかけ来店のきっかけ(集計できる選択肢)選択肢を先に決め、自由な文で入れない
直近の施術の記録(薬剤・番号・デザインなど)施術の履歴まずは直近の数回分だけ入れる
それより前の施術の記録スキャンしたファイル、または移さない必要になったら紙やファイルで確かめる
図・手書きのメモ・写真画像として添付、またはスキャンしたファイル写真の記録について同意があるかを確かめる
回数券・コースの残り回数券やコースの残りの管理移した日と残りの数を、お客様と確かめる
同意欄(個人情報・写真の記録・SNS 等への掲載)同意の記録同意の内容ごとに分けて残す

すべての項目を入力欄にする必要はありません。施術の前に必ず見る情報と、集計に使う情報(来店のきっかけなど)だけを入力欄にし、それ以外はスキャンしたファイルで残すと、入力の量を大きく減らせます。

電子化をきっかけに、カルテの項目そのものを見直す店も多くあります。業種ごとの項目の例は、冒頭で紹介したカルテ テンプレートで、初回にお客様に書いてもらう項目はカウンセリングシートの項目例で説明しています。電子カルテを含めて顧客の記録をまとめるシステムの選び方は、サロンの顧客管理システム(CRM)の選び方で説明しています。

手順4:データ化の方法を選ぶ

紙カルテをデータにする方法は、主に3つあります。1つに絞る必要はなく、手順2の区分ごとに使い分けるのが現実的です。

方法やり方向いているカルテ気をつけること
来店したときに入力する予約が入ったお客様の紙カルテを前日までに出しておき、施術の前後に入力する「来店したときに移す」の区分入力した紙に印をつけ、二重に入力しない
スキャンして PDF などにするスキャナーや複合機で紙を読み取り、お客様ごとにファイルにする図や手書きのメモが多いカルテ、過去の施術の記録ファイル名のルールを決める。読み取ったあとに読めるかを確かめる
まとめて手入力する閉店後や休みの日に、紙を見ながら電子カルテに入力する「先に移す」の区分項目の対応表どおりに入れる。入力した人と日付を残す

スキャンするときは、ファイル名に「お客様の番号_お名前_読み取った日」のように同じ形で名前をつけると、あとで探しやすくなります。両面に書いてあるカルテは、裏面の読み取り漏れに注意してください。読み取ったファイルは、文字が読めるかを画面で確かめてから、次の手順に進みます。

手入力の量を見積もるときは、10枚ほどを実際に入力して1枚あたりの時間を測り、枚数をかけます。仮に1枚5分かかるなら、300枚で25時間です。この数字を見て、手入力する範囲を狭めるか、スキャンを増やすかを決めます。

字がかすれていたり、略語の意味がわからなかったりするカルテは、無理に入力しないほうが安全です。読み違えた情報が電子カルテに残ると、紙のときより信用されやすいためです。読めない部分は空けておき、お客様が来店したときに確かめて入力します。

手順5:紙と電子を並行して使う期間を設ける

切り替えの日を決めて、その日から一気に紙をやめると、入力の漏れや操作の不慣れで現場が混乱することがあります。一定の期間、紙と電子を一緒に使い、電子だけで回るようになったら紙をやめる、という順番が安全です。

並行期間のルールの例は次のとおりです。

  • 新しいお客様は、初日から電子カルテだけに記録する
  • 再来のお客様は、紙を見ながら電子カルテに入力し、入力した紙の表に「入力済み」の印と日付を書く
  • 施術の記録は電子カルテに書き、紙には書き足さない(どちらが新しいかわからなくなるため)
  • 予約が入ったお客様の紙カルテは、前日までに棚から出しておく
  • 端末や通信が使えないときは、紙の予備の用紙に書き、復旧したら入力する

並行期間の長さは、来店の間隔に合わせて決めます。お客様の多くが一度は来店するくらいの期間を取ると、「来店したときに移す」区分の多くを、並行期間のうちに移し終えられます。

手順6:紙カルテの保管と廃棄

データにした紙カルテも、個人情報が書かれた書類であることに変わりはありません。データにしたからといってすぐに捨てるのではなく、保管と廃棄のルールを決めてから扱います。

保管するときは、移した紙を箱やファイルにまとめ、鍵のかかる場所にしまいます。入力の内容に疑問が出たときに確かめられるよう、一定の期間は残しておくと安心です。

廃棄するときは、店で決めた期間が過ぎたものから、シュレッダーにかけるなど、読めない状態にして捨てます。量が多い場合は、書類の廃棄を請け負う業者に頼む方法もあります。業者に頼むときは、処分した日と量がわかる記録(証明書など)を受け取り、店の記録として残しておくと安心です。

紙カルテ電子化のチェックリスト

移行の前後で、次の項目を確かめてください。印刷して、終わったものに印をつけて使えます。

準備 – [ ] 電子化で解決したいことを決めた- [ ] 移行の担当者と、終わりの時期を決めた- [ ] 紙カルテの枚数を、最終来店日ごとに数えた- [ ] 「先に移す」「来店したときに移す」「移さない」の区分を決めた- [ ] 紙の項目と電子カルテの項目の対応表を作った- [ ] 来店のきっかけなど、選択肢で入れる項目の選択肢を決めた

データ化 – [ ] アレルギー・服用中の薬などの注意事項を、優先して移した- [ ] 回数券やコースの残りを移し、移した日を記録した- [ ] スキャンしたファイルの名前のルールを決め、読めるかを確かめた- [ ] 読めないカルテは空けておき、来店のときに確かめる手順にした- [ ] 同じお客様が重複して登録されていないかを確かめた

運用と個人情報 – [ ] 並行期間の長さと、紙に「入力済み」の印をつけるルールを決めた- [ ] 端末や通信が使えないときの手順と、予備の用紙を用意した- [ ] スタッフごとのログインと、見られる範囲を設定した- [ ] 店内の掲示やカウンセリングシートの、個人情報の使い道の文を見直した- [ ] 移した紙の保管の場所と、廃棄までの期間を決めた- [ ] 廃棄の方法と、廃棄の記録の残し方を決めた

電子化するときの個人情報の扱い:同意・保管・廃棄

カルテに書かれた内容は個人情報です。ここでは、個人情報保護委員会が公表している「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」などをもとに、電子化のときに気をつけたいことを一般的な考え方としてまとめます。法律の当てはめは、店の状況で変わります。詳しくは、弁護士などの専門家へご相談ください。

使い道(利用目的)と同意を確かめる

個人情報保護法では、個人情報の使い道(利用目的)をできるだけ特定し、本人に知らせるか公表することが求められています。カウンセリングシートのように、お客様に書面に書いてもらって情報を受け取る場合は、あらかじめ使い道をはっきり示すことが求められます。

紙から電子に記録の形を変えるだけで、使い道が同じなら、改めて同意を集め直す必要はないと考えられることが多いでしょう。ただし、電子化をきっかけに、LINE での案内を始める、集計に使うなど、使い道を広げる場合は、店内の掲示やカウンセリングシートの文を見直してください。

既往歴や服用中の薬のように病歴に関わる情報は、「要配慮個人情報」に当たる場合があります。要配慮個人情報は、原則として本人の同意なく取得したり、第三者に渡したりできません。写真は、カルテへの記録と、SNS 等への掲載とで同意を分けて取っておくと、行き違いを防げます。

電子カルテでの保管:安全管理措置

個人情報保護法は、個人データの漏えいなどを防ぐために、必要で適切な安全管理の措置を取ることを事業者に求めています。電子カルテでは、紙と違う点に気をつけます。

  • スタッフごとにログインの ID を分け、パスワードを使い回さない
  • スタッフの役割に合わせて、見られる範囲や書き出せる範囲を分ける
  • タブレットやスマートフォンを紛失したときの手順(ログアウト、パスワードの変更など)を決める
  • 辞めたスタッフのログインは、すぐに止める
  • スキャンしたファイルを、個人の端末や私用のクラウドに保存しない

従業者の監督も事業者の義務です。電子化の作業をスタッフに頼むときは、持ち出さない、私用の端末で撮影しない、といったルールを伝えておきます。

外部に作業を頼むときは委託先を確かめる

スキャンや入力を外部の業者に頼む場合や、クラウド型の電子カルテを使う場合は、個人データの取り扱いを外部に任せることになる場合があります。個人情報保護法では、個人データの取り扱いを委託するときは、委託先を必要で適切に監督することが求められています。依頼する前に、どのように個人データを扱うか、作業のあとにデータをどうするかを確かめ、契約の内容を残しておきましょう。

使わなくなった記録の消去と廃棄

個人情報保護法には、カルテを何年保管するかという一律の期間の定めはありません。そのうえで、利用する必要がなくなった個人データは、遅滞なく消去するよう努めることとされています(努力義務)。紙の廃棄と同じように、電子カルテやスキャンしたファイルについても、「最後の来店から何年で削除する」という店の期間を決めておきます。

ただし、健康保険を使う施術の記録(施術録)のように、別の法令や通知で保存の期間が決まっている記録は、そちらに従います。整骨院や鍼灸院などで該当する記録がある場合は、所属の団体などに確かめてください。

法令やガイドラインは改正されることがあります。最新の内容は、個人情報保護委員会の「法令・ガイドライン等」のページで確かめてください。

電子カルテ(サロン向け)を選ぶときに、移行の面で確かめること

電子カルテの比較では、機能や料金が目に入りやすいですが、紙からの移行のしやすさも製品によって違います。次の点は、申し込む前に確かめておくと安心です。

確かめること理由
紙の項目を入れられる項目を、自分で作れるか手順3の対応表どおりに入れられないと、情報が散らばる
スキャンしたファイルや写真を、お客様ごとに添付できるか移さない過去の記録を、ファイルで残せる
データ移行の代行があるか。紙のまま受け付けるか、データにしてから渡すのか代行の範囲によって、店でする作業が大きく変わる
代行の費用と、含まれる作業の範囲初期費用の中に入っているか、別料金かを確かめる
解約するときに、データを書き出せるか次に乗り換えるとき、同じ苦労を繰り返さないため
スタッフごとのログインと、見られる範囲の設定個人情報の安全管理のため

Leporto に移るときのデータ移行

Leporto は、予約・顧客・カルテ(音声カルテを含む)をまとめて管理できる、経営改善型の予約管理システムです。紙のカルテから移るときは、次の方法で進められます。

初期設定の代行を頼む場合、費用は1店舗30,000円(税抜)で、データ移行が含まれます。自分で設定する場合、初期費用はかかりません。

紙のカルテについては、紙のままお預かりして入力する作業は行っていません。手順4のように、スキャンして PDF などのデータにしていただければ、取り込みについてご相談できます。手書きの字が読み取れないものは、移すことができません。読みにくいカルテは、手順4で説明したように、来店したときに確かめて入力する方法をおすすめします。

カルテの機能は Leporto の電子カルテで、ほかの仕組みから移るときの進め方は Leporto への乗り換えとデータ移行で紹介しています。

参考にした公的機関の資料

いずれも2026年10月18日に参照しました。

よくある質問

紙カルテはすべて電子化しないといけませんか

すべてを移す必要はありません。施術に必要な情報を探しやすくすることが目的なら、最近来店したお客様と、アレルギーなどの記録があるお客様を先に移し、それ以外はお客様が来店したときに移す方法で十分なことが多くあります。長く来店がないお客様の紙は、店で決めた期間のあいだ保管し、過ぎたら廃棄します。

移行にはどのくらいの時間がかかりますか

紙の枚数と、1枚あたりの入力の時間で決まります。10枚ほどを実際に入力して1枚あたりの時間を測り、移す枚数をかけると見積もれます。時間が足りない場合は、入力する項目を減らしてスキャンで残す部分を増やすか、来店したときに移す区分を広げてください。

スキャンしたら、紙のカルテはすぐに捨ててよいですか

すぐに捨てるより、一定の期間は鍵のかかる場所に保管しておくほうが安心です。スキャンの読み取り漏れや入力の誤りに、あとから気づくことがあるためです。廃棄するときは、店で決めた期間に沿って、シュレッダーなどで読めない状態にしてください。健康保険の施術録のように保存の期間が決まっている記録は、そちらに従います。

手書きの図やデザインのメモはどう移せばよいですか

図やメモは、文字に打ち直すより、スキャンや撮影をして画像のまま残すほうが正確です。電子カルテにお客様ごとの画像を添付できるかを確かめ、添付できる場合は、施術の履歴の近くに置いておくと、施術の前に見返しやすくなります。

移行のあいだに、お客様に伝えておくことはありますか

使い道が変わらないなら、特別な説明は必要ないことが多いでしょう。ただし、電子化をきっかけに LINE での案内などを始める場合は、使い道の文を見直して店内に掲示するか、来店のときに伝えてください。紙のカルテの読めない部分を確かめるときも、来店のときに口頭で聞けば、記録を正しく直せます。