サロンの顧客管理システム(CRM)の選び方:つながりで決める判断表と契約前のチェックリスト

作業台を真上から見た様子。中央の顧客ファイルを、予約の画面のタブレット、決済端末、カルテの用紙、封筒が囲んでいる

サロンの顧客管理システムは、機能の多さではなく、予約・カルテ・会計・配信・分析がどこまで同じお客様の記録につながるかで選びます。つながっていない所では、同じ情報の打ち直しと、数字のずれが起きるからです。この記事では選び方として、CRM の意味、店の規模別の判断表、契約前のチェックリスト、紙や Excel から移る手順、個人情報の扱いの順に説明します。何を記録するかは美容室の顧客管理:記録する項目と使い方にまとめたので、ここでは「どの仕組みで管理するか」に絞ります。

顧客管理システム(CRM)とは

CRM は Customer Relationship Management の略で、お客様との関係を記録して、次の接客や案内に生かす考え方です。その考え方を形にした道具を、顧客管理システム、顧客管理ツール、CRM ツールなどと呼びます。

ただし、検索で上位に出る「CRM ツール」の多くは、企業の営業部門向けの製品です。商談の進み具合や名刺の管理が中心で、サロンの施術の記録とは役割が違います。サロンで使うものは、予約やカルテとひとつになった「サロン管理システム」の形が多く、呼び方は製品ごとにまちまちです。

比べる点営業向けの CRMサロン向けの顧客管理システム
中心の記録会社・担当者・商談の段階来店・施術・薬剤・好み
よく使う画面商談の一覧、売上の見込み予約表、カルテ、会計
つながる仕組みメール配信、名刺、営業の日報予約サイト、LINE、POSレジ
見る数字受注の割合、商談の件数再来率、次回予約率、客単価

営業向けの CRM でも、項目を自分で作ればお客様の名簿にはなります。しかし予約表やカルテは別に持つことになり、後で説明する「つながり」が切れやすくなります。呼び方より先に、予約とカルテがその中にあるかを確かめてください。

システムにする時期の目安

紙のカルテや Excel でも、顧客管理はできます。ひとりで営業していて、予約の入り口が電話だけなら、紙のほうが速い場面もあります。紙・Excel・システムの細かな比べ方は、前に挙げた記事の比較表をご覧ください。

システムを検討したほうがよいのは、手間が毎週出ているときです。たとえば、予約サイトの予約を店の予約表へ書き写している。担当が休みの日に、前回の施術がすぐに分からない。同じお客様が、表記の違いで何件も登録されている。しばらく来ていないお客様や、来店のきっかけ別の数字を、月末に手で探してまとめ直している。こうした状態です。

どれも「同じお客様の情報が、別々の場所にある」ことから起きる手間です。当てはまる数が多いほど、システムにしたときに減る作業も多くなります。

予約・カルテ・会計・配信・分析のつながりで選ぶ判断表

サロンでは、1人のお客様について「予約→カルテを見る→施術→会計→カルテに書く→次の案内→数字の集計」という流れが、来店のたびにくり返されます。顧客管理システムを選ぶときは、この流れのどこまでを1つの記録でつなぎたいかを決めます。

機能ごとに、つながると何が変わるか

機能顧客の記録とつながると変わること別々だと起きること試用で確かめる点
予約予約したお客様のカルテを、来店前に開ける予約サイトと店の予約表で二重に管理する予約サイトの予約が、同じお客様の記録にまとまるか
カルテ前回の施術や注意事項を、担当が変わっても見られる紙を探す、聞き直す自分の店の項目を作れるか。写真を残せるか
会計来店日・メニュー・金額・担当が自動で残るレジの記録をカルテに書き写す会計の内容が、そのお客様の履歴に入るか
配信来店の周期や最後の来店日で、相手を絞って送れる全員に同じ案内を送るか、手で名簿を作るどの条件で絞れるか。配信の手段は何か
分析新規・再来・失客を、同じ基準で数えられる表計算でまとめ直す。人によって数え方が変わる来店のきっかけ別や、スタッフ別に見られるか

予約と会計のつながりは美容室のPOSレジの選び方で、予約の受け方は予約システムの選び方でくわしく説明しています。再来の数え方はリピート率の計算と上げ方をご覧ください。

店の規模で変わる優先順位

同じ機能でも、店の規模によって優先する順番が変わります。下の表の人数は目安で、決まった基準ではありません。

店の規模先にそろえたいこと後からでよいこと気をつけたいこと
ひとりで営業予約とカルテ。スマホで入力できること細かな分析、スタッフの権限月額の料金と、手間が減る量のつり合い
スタッフ 2〜5 人予約・カルテ・会計のつながり。担当の引き継ぎ多店舗の集計スタッフごとのログインと、見られる範囲
スタッフ 6 人以上、複数の店舗分析と、店舗をまたいだお客様の記録—権限の細かさ、操作の記録、店舗ごとの数字の分け方

ひとりの店は、機能をそろえすぎると入力が増えて続きません。人数が増えるほど、引き継ぎと権限の重みが増します。

ツールを組み合わせるなら、おおもとの顧客の記録を1つに決める

予約サイト、LINE、POSレジ、カルテのアプリを組み合わせて使う店も多くあります。その場合に先に決めたいのが、お客様のおおもとの記録(ほかの道具が元にする名簿)をどこに置くかです。

おおもとを決めないまま使うと、電話番号を変えたお客様の情報が、ある道具では新しく、別の道具では古いまま残ります。来店回数も道具ごとに分かれ、再来率の数字が合わなくなります。

組み合わせるときは、次の3つを紙に書いて店で共有します。

  1. おおもと:お客様の氏名・連絡先・来店の履歴を、どの道具で持つか
  2. 入口:新しいお客様は、どの道具で登録するか(予約サイト経由、電話、紹介など入口ごとに)
  3. 直す場所:連絡先が変わったとき、どこを直し、ほかの道具にどう反映するか

おおもとにする道具は、予約とカルテの両方を持つものにすると、つなぎ直しが少なくて済みます。道具どうしが自動でつながらない部分は、だれが・いつ書き写すかまで決めておきます。

契約前に確かめるチェックリスト

上位の記事では、機能・料金・サポートの3点を確かめるよう書かれていることが多くあります。ここではそれに加えて、解約するときのデータと、スタッフの権限まで含めた一覧にしました。資料や無料体験で、次の項目を確かめてください。

データの持ち出し(解約・乗り換え)- [ ] 解約するときに、お客様の一覧と来店の履歴を書き出せるか- [ ] 書き出せる範囲に、カルテの文章や写真が入るか- [ ] 書き出しの形式(表計算ソフトで開けるか)と、解約後にデータが消えるまでの期間- [ ] いまのデータを取り込むとき、どの形式なら受け付けるか

権限と安全管理- [ ] スタッフごとにログインを分けられるか- [ ] 役割ごとに、見られる範囲・直せる範囲・書き出せる範囲を分けられるか- [ ] だれがいつ記録を見たり直したりしたか、あとで確かめられるか- [ ] 辞めたスタッフや、なくした端末のログインをすぐに止められるか

つながりと運用- [ ] 使っている予約サイトや LINE と、同じお客様の記録にまとまるか- [ ] 施術の合間に、スマホやタブレットで入力できるか- [ ] 自分の店の項目(薬剤の配合、来店のきっかけなど)を作れるか

費用と契約- [ ] 月額のほかに、初期費用・端末・配信・オプションの費用があるか- [ ] 契約の期間と、途中で解約するときの条件- [ ] 設定やデータ移行の手伝いが、料金に入っているか

この中で後から変えにくいのは、データの持ち出しと契約の期間です。費用の比べ方は、予約システムの記事で紹介した「1年目の総額」で計算すると、製品どうしを同じ条件で並べられます。

紙・Excel・ほかのシステムから移る手順

顧客管理システムへの移行は、データを入れる作業より、入れる前の整理に時間がかかります。次の順に進めると、移したあとに重複や抜けが出にくくなります。

  1. 項目を決める:新しいシステムの項目と、いまの紙や Excel の項目を1対1で対応させる表を作ります。
  2. 重複をまとめる:同じお客様が複数いないかを、電話番号で並べて確かめ、1件にまとめます。
  3. 移す範囲を決める:たとえば「最後の来店から2年以内のお客様」のように、範囲を店で決めます。
  4. 少しだけ試す:10人分ほどを先に入れて、表示や検索がおかしくないかを確かめます。
  5. 切り替える日を決める:その日からの予約と会計は、新しいシステムだけに入れます。
  6. 並行の期間を置く:最初の数週間は、古い記録もすぐ見られる場所に残しておきます。
  7. 古い記録を片づける:移し終えた紙やファイルは、店で決めた期間が過ぎたら、読めない状態にして廃棄します。

次の図は、上の 7 つの手順を、移行の流れとしてまとめたものです。

紙・Excel・ほかのシステムから顧客管理システムへ移る 7 つの手順の図。項目を 1 対 1 で対応させ、電話番号で重複をまとめ、移す範囲を決め、10 人分ほどで試し、切り替える日を決め、数週間の並行の期間を置き、期間が過ぎた古い記録を読めない状態にして廃棄する。

ほかのシステムから乗り換える場合は、手順の前に、いまのシステムから書き出せる範囲を確かめます。書き出せない記録があれば、切り替えの前に画面を見ながら必要な分だけ控えておきましょう。紙のカルテからの移し方は、紙カルテを電子化する手順が参考になります。範囲の決め方や並行の期間まで、手順ごとにまとめた記事です。移行の前に項目を見直したいときは、サロンのカルテ テンプレートの項目も参考になります。

個人情報の扱いで確かめること

顧客管理システムには、氏名・連絡先・施術の記録といった個人情報が集まります。ここでは、個人情報保護委員会が公表している法令・ガイドラインをもとに、システムを選ぶときに関わる考え方を一般的にまとめます。

まず、個人情報の使い道(利用目的)をできるだけ特定し、本人に知らせるか公表することが求められています。システムにしたのをきっかけに配信を始めるなど、使い道を広げるときは、店内の掲示やカウンセリングシートの文を見直してください。

既往歴や服用中の薬など病歴に関わる情報は、「要配慮個人情報」にあたる場合があります。原則として、本人の同意なく取得したり第三者に渡したりできません。

漏えいなどを防ぐために、必要で適切な安全管理の措置を取ることも求められています。チェックリストのログインや権限の項目は、そのための確認でもあるのです。また、クラウド型のシステムに個人データを預けることが、取り扱いの委託にあたる場合があります。委託するときは、委託先を必要で適切に監督することが求められています。

利用する必要がなくなった個人データは、遅滞なく消去するよう努めることともされています。解約後にデータがどう扱われるかを契約前に確かめておくのは、この点でも役に立ちます。法令やガイドラインは改正されることがあるため、最新の内容は個人情報保護委員会のページで確かめてください。自店の運用が適切かどうか、詳しくは専門家へご相談ください。

Leporto で顧客管理をまとめる場合

Leporto は、予約・顧客・カルテ(音声カルテを含む)・売上と集客の分析・LINE 連携を1つにまとめた、経営改善型の予約管理システムです。ホットペッパー(サロンボード)の予約とも一元管理でき、ダブルブッキングになりません。そのため、予約サイトから来たお客様も同じ顧客の記録に残せるのが特徴です。

つながりの面では、来店前に Web でカウンセリングシート(問診)を入力してもらえます。配信では、LINE で来店の周期などで相手を絞って送ることが可能です。分析では、管理画面の「アナリティクス」で来店のきっかけ別の新規客数と再来率が分かるため、どの入口のお客様が2回目に来ているかを確かめられます。カルテの機能は Leporto の電子カルテ で紹介しています。

料金は、オーナーとスタッフ1名までのライトプランで月5,000円(税抜)からで、1年契約です。設定の代行を頼む場合の初期費用は1店舗30,000円(税抜)で、データ移行を含みます。紙のカルテは、PDF などのデータにしていただければ取り込みを相談できます。紙のままお預かりして入力する作業は行っておらず、手書きの字が読み取れないものは移せません。ほかのプランとの違いは Leporto のプラン別の料金 をご覧ください。この記事のチェックリストは、Leporto を検討するときにも同じように使ってください。

参考にした公的機関の資料

いずれも2026年10月18日に参照しました。

よくある質問

Q. 顧客管理システムと CRM は同じものですか?

ほぼ同じ意味で使われます。CRM は「お客様との関係を管理する」考え方で、それを行う道具を顧客管理システムや CRM ツールと呼びます。ただし営業向けの製品を指すことも多いため、サロンで使う場合は、予約やカルテがその中にあるかで選んでください。

Q. 顧客管理は無料のツールでも十分ですか?

ひとりで営業していて、予約の入り口が少ないうちは、無料のツールや Excel でも回ります。無料のものを使う場合も、解約するときにデータを書き出せるか、スタッフごとにログインを分けられるかは確かめておきます。後で有料のシステムに移るとき、データを持ち出せるかで手間が大きく変わるからです。

Q. 予約システムとは別に、顧客管理システムが必要ですか?

予約システムの中に顧客の記録とカルテがあれば、別に用意しなくても足ります。別々に使う場合は、どちらをおおもとの顧客の記録にするかを決め、二重に登録しないようにします。

Q. 移行にはどのくらいの期間がかかりますか?

お客様の数と、いまの記録の整い方で大きく変わります。重複が多い場合や、紙のカルテが多い場合は、整理に時間がかかるでしょう。この記事の手順のうち、項目の対応表づくりと重複の整理を先に済ませておけば、実際の切り替えは短く済みます。