美容室のPOSレジの選び方:予約・カルテ・会計のつながりで判断する

美容室の POSレジは、会計の機能の多さよりも、予約・カルテ・会計の3つがどこでつながり、どこで手入力が残るかで選ぶと失敗が減ります。会計だけなら無料の汎用型でも足りますが、予約表やカルテとつながらないと、メニューや担当を何度も打ち直すことになります。この記事で扱うのは、二重入力が出る場所で選ぶ判断表、汎用型と美容室特化型の違い、1年目の総額に入れる費用の項目、試用で確かめることの4つです。
美容室のPOSレジとは、普通のレジと何が違うか
POS は「販売時点の情報の管理」という意味です。POSレジは、会計をするたびに、いつ・誰に・何を・いくらで売ったかを記録し、あとから集計できるレジです。金額を足してお釣りを出すだけのレジと違い、日ごとや月ごとの売上、メニュー別の売上を自動でまとめられます。
美容室で使う場合は、一般の小売店とは求める機能が少し違います。売っているのが主に施術で、同じお客様が何度も来店し、担当のスタッフがいるためです。美容室の POSレジで比べられることが多い機能は、次のとおりです。
| 機能 | 美容室で使う場面 |
|---|---|
| 会計・レシート | 施術と店販の会計、割引、回数券やポイントの利用 |
| 売上の集計 | 日・月の売上、メニュー別、技術と店販の内訳 |
| スタッフ別の集計 | 担当者ごとの売上、指名の数(歩合や評価に使う) |
| 顧客の記録 | 来店の履歴、会計の履歴、メモ |
| カルテ | 施術の内容、薬剤、写真 |
| 予約との連携 | 予約の内容(お客様・メニュー・担当)を会計にそのまま使う |
| キャッシュレス決済 | クレジットカード、電子マネー、QR コード決済 |
このうち、どこまでを POSレジに任せ、どこからを予約システムや顧客管理に任せるかで、選ぶ製品が変わります。顧客管理のシステムを選ぶときの確認点はサロンの顧客管理システム(CRM)の選び方にまとめています。
予約・カルテ・会計のつながりで選ぶ判断表
美容室の受付では、1人のお客様について「予約を受ける→施術の前にカルテを見る→会計する→カルテに書く」という流れが毎回あります。この流れのうち、別々の道具でつながっていないところで、同じ情報の打ち直し(二重入力)が出ます。
いまの店の構成を下の表から選ぶと、どこで二重入力が出るか、次にどの形を検討するとよいかが分かります。
| いまの構成 | 二重入力が出る場所 | 向いている店 | 次に検討する形 |
|---|---|---|---|
| A:予約サイト+紙の予約表+紙のカルテ+汎用の POSレジ | 予約サイト→予約表、予約表→レジ(お客様・メニュー・担当)、レジ→カルテ(金額・店販) | ひとりで営業し、来店数が少ない店 | B か D |
| B:予約システム(カルテ込み)+汎用の POSレジ | 予約システム→レジ(メニュー・金額・担当) | 予約とカルテを先にまとめたい店 | 連携の有無を確かめて継続、または D |
| C:美容室特化の POSレジ(カルテ・予約込み)+予約サイト | 予約サイト→特化 POS の予約表(連携がない場合) | 会計とカルテを中心に回している店 | 予約サイトとの連携を確かめる |
| D:予約・顧客・カルテ・会計が1つのシステム | 少ない(キャッシュレス決済の端末とのつながりは別に確かめる) | 予約経路が複数あり、スタッフが多い店 | — |
表の矢印1本ごとに、1日の来店数の分だけ打ち直しが発生します。打ち直しは手間だけでなく、担当者の付け間違いや金額のずれの原因にもなり、スタッフ別の売上や次回予約の数字が正しく出なくなります。
二重入力がいちばん多いのは、ホットペッパービューティーなどの予約サイトと、店の予約表が分かれている場合です。予約サイトと自社の予約をまとめる方法はホットペッパーと自社予約を併用する方法で説明しています。
判断表を使うときの手順
- 1人のお客様の流れを、予約から会計後まで紙に書き出す
- 同じ情報(名前・メニュー・担当・金額)を2回以上書いている場所に印をつける
- 印の数が多い場所から、つなげられる製品を探す
- つながらない部分は、手入力のルールで補えるかを考える
汎用型と美容室特化型の違い
POSレジは、業種を問わず使える汎用型と、美容室やサロン向けに作られた特化型に大きく分かれます。
| 比べる点 | 汎用型 | 美容室特化型 |
|---|---|---|
| 得意なこと | 会計、売上の集計、キャッシュレス決済 | 会計に加え、カルテ・顧客の記録・スタッフ別の集計 |
| カルテ | 顧客のメモ程度の製品が多い | 施術の内容や薬剤、写真を残せる製品が多い |
| 予約との連携 | 別の予約サービスとつなぐ形が多い | 自社の予約機能や、予約サイトとの連携を持つ製品がある |
| 費用の傾向 | 月額が低い、または無料のプランがある | 初期費用と月額がかかる製品が多い |
| 導入 | 自分で設定して始めやすい | 設定や操作の説明を受けて始める製品が多い |
| 向いている店 | 会計と売上の把握が目的の店 | 施術の記録と会計を一緒に管理したい店 |
迷ったら、「この1か月で、前回の施術内容を確かめるために紙のカルテを探した回数」を思い出してください。何度も探しているなら、カルテを同じ場所に持てる構成が向いています。会計の締めと売上の把握が主な目的なら、汎用型から始めても足ります。
注意したいのは、カルテをどこに置くかは、あとから変えるのに手間がかかることです。料金のプランは契約後に変えられることが多いのに対して、カルテを別の製品に移すにはデータの移行が要ります。カルテの項目の決め方は美容室の顧客管理:記録する項目で、紙から移る手順は紙のカルテを電子化する手順で説明しています。
クラウド型とインストール型
POSレジは、データをどこに置くかでも2つに分かれます。クラウド型は、データを提供会社のサーバーに置き、タブレットやパソコンのブラウザ、アプリから使う形です。インストール型(オンプレミス型)は、店のパソコンや専用の機器にソフトを入れ、データも店の中に置く形です。
クラウド型は、店の外からも売上を確かめられ、複数の店舗の数字をまとめて見やすいのが利点です。その代わり、インターネットが使えないと一部の機能が止まる場合があります。インストール型は、回線の影響を受けにくい一方で、機器の故障やバックアップ、ソフトの更新を店で管理する必要があります。いまは美容室向けの製品でもクラウド型が多いため、選ぶときは「回線が切れたときに会計を続けられるか」と「データのバックアップを誰が取るか」を確かめてください。
店舗の規模で変わること
ひとりで営業する店と、スタッフが多い店、複数の店舗を持つ店では、POSレジに求めることが変わります。ひとりの店では、会計と月の売上が早く出ることが中心になります。スタッフが増えると、担当者ごとの売上や指名の数を、歩合や評価に使うために正しく分けて記録することが大切です。複数の店舗では、店ごとの数字を同じ定義でそろえて比べられるかが選ぶ基準になります。歩合の計算のしかたは美容室の歩合制の計算方法で、店舗をまたいだ数字のそろえ方は多店舗の店舗管理の方法で説明しています。
料金の数え方も、店舗の数・スタッフの人数・端末の台数のどれで増えるかが製品ごとに違います。いまの人数だけでなく、1〜2年後の人数でも総額を出しておくと、あとで想定外の費用が増えるのを防げます。
費用は1年目の総額で比べる
POSレジの費用は、月額だけで比べると実際の負担とずれます。次の項目を書き出し、1年目の総額と2年目以降の年額に分けて比べます。
| 費用の項目 | 内容 | 1年目 | 2年目以降 |
|---|---|---|---|
| 初期費用 | 契約時の費用、設定の代行、操作の説明 | 入る | 入らない |
| データ移行 | 前の製品や紙のカルテからの移行 | 入る | 入らない |
| 端末 | iPad などのタブレット、パソコン | 入る | 買い替えのとき |
| 周辺機器 | レシートプリンター、キャッシュドロワー、自動釣銭機、バーコードリーダー | 入る | 故障・買い替えのとき |
| 決済端末 | カード・電子マネーを読む機器 | 入る | 買い替えのとき |
| 月額の利用料 | 基本料金。店舗数・スタッフ数・端末数で変わることがある | 12か月分 | 12か月分 |
| オプション | 予約連携、カルテ、分析、多店舗の機能など | 12か月分 | 12か月分 |
| 決済手数料 | キャッシュレス決済の売上に対する手数料 | 決済額×料率 | 決済額×料率 |
| 通信・保守 | インターネット回線、保守の契約 | 12か月分 | 12か月分 |
1年目の総額は、次の式で出せます。
1年目の総額 = 初期費用+データ移行+端末と周辺機器と決済端末の購入費+(月額の利用料+オプション+通信・保守)×12+年間の決済手数料
次の図は、この式の項目を、導入のときにかかるもの・毎月かかるもの・決済の分に分けたものです。

決済手数料は、キャッシュレスで払われる売上が多い店ほど大きくなります。月の売上のうちキャッシュレスの割合を自店の記録で確かめ、料率をかけて年額を見積もってください。料率や料金は製品ごとに違い、変わることもあるため、各社の公式のページで最新の金額を確かめます。
また、最低の契約期間や、解約するときの費用、解約後にデータを書き出せるかも、総額と一緒に確かめておきます。
導入前に試用で確かめること
無料の試用や体験ができる製品なら、いつもの1日の流れを再現して確かめます。機能の一覧を見るだけでは、二重入力が残るかどうかは分かりません。
- ☐ 予約サイトから入った予約が、レジの会計画面にお客様・メニュー・担当つきで出てくるか
- ☐ 1人の会計に、施術と店販、割引、回数券を混ぜて打てるか
- ☐ 担当者とアシスタントが別のとき、売上をどう分けて記録できるか
- ☐ 会計のあと、カルテや次回の予約にそのまま進めるか
- ☐ 日の締め(現金の過不足の確認)と、月の売上の集計がすぐに出るか
- ☐ スタッフ別・メニュー別・技術と店販別の売上を見られるか
- ☐ 新規と再来を分けて数えられるか
- ☐ いまの顧客データを取り込めるか。解約時に書き出せるか
- ☐ ネットが切れたときに会計を続けられるか
- ☐ 問い合わせの方法と受付の時間
回数券や前払いの会計がある店は、残り回数と期限の管理まで試してください。残り回数・有効期限・前受金の記録のしかたは回数券の管理方法で説明しています。
なお、レシートや領収書の記載の決まりなど税に関わることは、国税庁の案内を確かめるか、税理士に相談してください。
導入後の最初の1か月で決めること
POSレジは、入れた日から全員が同じ使い方をできるわけではありません。最初の1か月は、次の3つを決めて運用をそろえます。
1つ目は、メニューの登録の仕方です。料金表と同じ名前・同じ区分(カット・カラー・パーマ・トリートメント・店販など)で登録すると、メニュー別の集計がそのまま使えます。2つ目は、担当者の付け方です。指名かどうか、アシスタントが入ったときに誰の売上にするかを決めておかないと、スタッフ別の数字が月によって変わってしまいます。3つ目は、日の締めの手順です。現金の数え方と、過不足が出たときの記録の仕方を決めておきます。
決めたことは紙1枚にまとめ、レジの近くに置いておくと、新しく入ったスタッフにも伝えやすくなります。
POSレジのデータを経営に使う
POSレジを入れる目的は、会計を速くすることだけではありません。会計のたびに残る記録から、売上を客数と客単価に分け、新規と再来、技術と店販、スタッフ別に見られることが大きな利点です。
毎月見る数字と表の作り方は売上管理の始め方で、客単価を要素に分けて上げる方法は美容室の客単価の上げ方で、会計のときに次の予約を取れた割合は次回予約率の計算と上げ方で説明しています。どの数字を見るかを先に決めておくと、POSレジの集計の画面で何を確かめればよいかもはっきりします。売上と費用を合わせた経営の数字の一覧は美容室経営・サロン経営の基本にあります。予約・会計・カルテ・分析をどの順番でデジタルにするかはサロン・店舗のDXは何から始めるかで整理しています。
Leporto で予約・顧客・会計の記録をつなぐ
Leporto は、予約・顧客・カルテ(音声カルテを含む)と、売上と集客の分析をまとめた、経営改善型の予約管理システムです。ホットペッパー(サロンボード)の予約とも一元管理でき、ダブルブッキングにならないため、判断表の「予約サイト→予約表」の打ち直しを減らせます。予約のときの事前決済の機能もあります。
Leporto には自社の POS(会計)もあり、選択肢の一つになります。Leporto の POS を使う場合は予約と会計の記録がつながるので、予約の内容を会計で打ち直す手間を減らせます。予約と会計の記録からは、新規・既存ごとの売上や平均客単価、技術売上と店販売上、次回予約率(スタッフ別を含む)などを見られます。会計の機能は Leporto の POS(会計)の機能ページ で紹介しています。料金は、オーナーとスタッフ1名までのライトプランで月5,000円(税抜)からです。詳しくは Leporto の料金プラン をご覧ください。いま使っているレジや決済端末との組み合わせ方は、導入前にご相談ください。
よくある質問
Q. ひとりで営業する小さな美容室にも POSレジは必要ですか?
必須ではありません。来店数が少なく、売上の集計を手で続けられるなら、いまのレジと表計算でも足ります。ただし、予約サイトと予約表の転記や、月末の集計に時間がかかっているなら、無料のプランがある汎用型から試す価値があります。
Q. 予約システムと POSレジは別々に必要ですか?
店の構成によります。予約・顧客・会計を1つにまとめた製品なら1つで済み、予約システムと汎用の POSレジを組み合わせる方法もあります。組み合わせる場合は、予約の内容が会計にそのまま使えるか(判断表の B)を確かめてください。予約の仕組みの選び方は予約システムの選び方にまとめています。
Q. 無料の POSレジで足りますか?
会計と売上の集計が目的なら、無料のプランで足りる店もあります。カルテや予約との連携、スタッフ別の集計が必要になると、有料のプランやオプションが要る場合があります。無料の範囲と、決済手数料や周辺機器の費用を合わせた1年目の総額で比べてください。
Q. POSレジを乗り換えるときに気をつけることは?
いまの製品から顧客の記録や売上の履歴を書き出せるか、新しい製品に取り込めるかを先に確かめます。カルテの写真や手書きのメモは移せない場合があるため、移す範囲を決めてから乗り換え、しばらくは古いデータを見られる状態にしておくと安心です。
