多店舗の店舗管理の方法:本部と店舗の役割分担と、全店の数字の比べ方

多店舗の店舗管理で最初に決めるのは、本部が決めることと店舗に任せることの線引きと、全店で同じ数え方をする数字の定義の2つです。美容室などのサロンが多店舗展開すると、経営者が毎日すべての店に立つことはできません。そのため、同じ定義の数字で店を比べ、差の大きいところに本部が手を貸す仕組みが要ります。この記事では、役割分担表、揃える数字の定義、店舗を比べる表と見方、情報共有のルール、FC本部で考えること、店舗管理システムの確認点の順に説明します。
多店舗の店舗管理で本部がすること
1店舗のときは、経営者が自分の目で予約表や接客を見て、その場で判断できます。2店舗目からは、経営者がいない店のほうが多くなります。店舗管理の仕事は、「経営者の目」の代わりになる数字とルールを用意し、店長が自分で判断できるようにすることです。
本部がすることは、大きく3つです。全店に共通する決まり(メニューと価格、数字の定義、顧客情報の扱い)を決めること。全店の数字を同じ形で集め、比べること。差が見つかった店に、人や手順の面で支援をすることです。逆に、日々の予約の受け方やスタッフの細かい配置まで本部が決めると、店長が判断しなくなり、店が増えるほど本部の手が回らなくなります。
次の図は、本部がする 3 つのことを順に並べたものです。

本部と店舗の役割分担表
役割分担は、店の規模や経営者の考えで変わります。下の表は、分担を話し合うときのたたき台です。「決める」は最終の判断をする側、「出す」は材料や案を出す側を表します。
| 業務 | 本部 | 店舗(店長) |
|---|---|---|
| メニューと価格 | 決める(全店共通の部分) | 地域に合わせた案を出す |
| 数字の定義と集計の方法 | 決める | 決めた定義で記録する |
| 月の目標 | 店長と話し合って決める | 案を出し、達成の計画を立てる |
| 予約の受け方・枠の設定 | 基本のルールを決める | 日々の調整をする |
| シフトと人の配置 | 店をまたぐ応援の調整 | 店のシフトを組む |
| 採用 | 募集と条件を決める | 面接に入り、店に合うかを見る |
| 教育 | 技術と接客の基準、研修 | 日々の指導と練習 |
| 集客と広告 | 全店の予算と媒体を決める | 店の掲載内容を更新する |
| 顧客情報の扱い | 社内のルールを決める | ルールどおりに運用する |
| 数字の見直し | 全店を比べ、支援する店を決める | 自店の数字を見て、打ち手を決める |
分担を決めたら、店長と本部の両方が見られる場所に置いておきます。迷ったときに「これは誰が決めることか」を確かめられるだけで、店長からの確認の連絡が減ります。
全店で揃える数字の定義
店を比べるときにいちばん多い失敗は、店によって数え方が違うことです。ある店は店販を売上に含め、別の店は含めないといった違いがあると、数字の差は店の実力ではなく数え方の差になります。下の表のように定義を決め、全店に配ります。
| 数字 | 揃える定義の例 | 店によって割れやすい点 |
|---|---|---|
| 売上 | その月に会計した金額の合計(税抜) | 税込か税抜か、店販を含めるか、回数券を売った月と使った月のどちらで数えるか |
| 新規客数 | その月に初めて来店した人の数 | 系列のほかの店に来たことがある人を、新規と数えるか |
| 既存客数 | 延べ客数のうち、新規ではない来店の回数 | 長く空いてから戻った人の扱い |
| 客単価 | 売上÷延べ客数 | 売上と同じく税込か税抜かを揃える |
| 次回予約率 | 会計から決めた時間内に次の予約が入った会計の割合 | 「決めた時間」の長さ、電話の予約を数えるか |
| 新規の再来率 | 新規客のうち、決めた日数以内に2回目に来た人の割合 | 日数(例:60日、90日) |
| 稼働率 | 施術の時間÷出勤の時間 | 分母を出勤時間と予約可能な時間のどちらにするか |
| キャンセル | 無断キャンセルと当日キャンセルを分けて数える | どこからを当日キャンセルとするか |
| 失客 | 最後の来店から決めた日数を過ぎても来ていない人 | 日数の決め方 |
多店舗ならではの論点は、店をまたいで来るお客様です。A店に通っていた人が初めてB店に来たとき、B店の新規と数えるか、系列の既存と数えるかを決めておきます。店ごとの集客を見たいならB店の新規、会社全体の集客を見たいなら既存と数える、という考え方があります。どちらでも構いませんが、全店で同じにしてください。
それぞれの数字の詳しい数え方は、次回予約率の計算方法、リピート率の計算方法、サロンの稼働率の計算で説明しています。
店舗を比べる表と見方
ここからの表の数字は、見方を示すために作った仮の数字です。実在の店舗の実績ではなく、良し悪しの目安を示すものでもありません。
| 項目 | A店 | B店 | C店 |
|---|---|---|---|
| 開店からの年数 | 8年 | 4年 | 1年 |
| スタッフ数 | 6人 | 4人 | 3人 |
| 月の売上 | 3,600,000円 | 2,200,000円 | 1,100,000円 |
| スタッフ1人あたりの売上 | 600,000円 | 550,000円 | 約367,000円 |
| 新規客数 | 40人 | 35人 | 45人 |
| 新規の再来率(90日) | 55% | 45% | 30% |
| 次回予約率 | 50% | 45% | 30% |
| 客単価 | 7,500円 | 7,000円 | 6,500円 |
| 稼働率 | 85% | 75% | 55% |
売上の大きさだけで並べると、C店がいちばん弱く見えます。しかし、開店から1年の店は既存のお客様が少ないため、売上が小さいのはある程度当然です。比べるときは、次の3つに気をつけます。
1つ目は、店の大きさをそろえることです。売上はスタッフ数や出勤時間で割り、1人あたりや1時間あたりにしてから比べます。2つ目は、店の段階をそろえることです。開店から日が浅い店は新規が多く既存が少ないため、売上よりも新規の再来率や次回予約率を見ます。3つ目は、人数の少ない数字に振り回されないことです。新規が10人前後の店では、1人の違いで割合が大きく動くため、3か月分をまとめて比べます。
この例のC店は、新規客数は3店でいちばん多い一方で、新規の再来率と次回予約率が低くなっています。集客はできていて、初回のお客様が2回目につながっていない店だと読めます。本部が手を貸すなら、広告費を増やすより、初回の接客と次回の提案の流れをA店と比べて見直すほうが先です。各店の数字をさらに細かい切り口で見る方法は、サロンの売上分析のやり方で説明しています。
店舗の比較表は、どの店にどんな支援が要るかを決めるための材料です。順位を付けて店長を責める使い方は避けます。数字の良い店のやり方を、ほかの店が取り入れられる形にまとめるのも本部の仕事です。
情報共有とルールの決め方
数字を集めても、共有の場とルールがないと、店長は自分の店のことだけを見るようになります。次のように、周期と場を決めておきます。
| 周期 | 場 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 毎日 | 店のミーティング | その日の予約、キャンセル、空いている枠 |
| 毎週 | 店長と本部の短い確認 | 今月の進み具合、困っていること、店をまたぐ応援 |
| 毎月 | 店長会議 | 全店の比較表、各店の打ち手、前の月の打ち手の結果 |
| 半年〜1年 | 本部と店長の面談 | 目標、メニューと価格、採用と教育の計画 |
ルールは、文章に残しておくことが大切です。予約の受け方、キャンセルの扱い、カルテの書き方、新規と既存の数え方を、全店で同じマニュアルにします。口頭だけで伝えると、店長が替わったときにルールも変わってしまいます。
顧客情報の扱いにも注意が必要です。お客様の情報をほかの店と共有する場合は、利用の目的を示しているか、誰がどこまで見られるかを決めておきます。個人情報の扱いは、個人情報保護委員会の案内を確かめ、詳しくは専門家に相談してください。
店をまたいでスタッフが応援に入る場合は、シフトと勤怠の記録も店ごとに分けておくと、店別の人件費や稼働率を正しく出せます。シフトの組み方はサロンのシフト管理を参考にしてください。
FC本部の場合に考えること
フランチャイズ(FC)で店舗を増やす場合、加盟店は本部とは別の事業者です。直営の店と同じ感覚で数字や運営を管理しようとすると、加盟店との関係がこじれることがあります。
考えておきたいのは次の点です。どの数字を本部が見られるのか、契約で範囲をはっきりさせること。ロイヤルティを売上に応じて計算する場合は、売上の定義(税込か税抜か、店販を含めるか)を契約と集計の両方で一致させること。加盟店が自分の店の数字を見て判断できる画面や資料を、本部と同じ定義で用意すること。全店の比較表を加盟店に見せる場合は、店名を出すかどうかを決めておくことです。
フランチャイズの契約や、本部と加盟店の関係にかかわる法令の扱いは、弁護士などの専門家に相談してください。
美容室の多店舗展開の前に整えておくこと
2店舗目を出す前に、次の点が整っているかを確かめておくと、出店後の混乱を減らせます。
- ☐ 1店舗目で、経営者がいなくても店が回る日がある
- ☐ 店長を任せられる人がいる、または育てる計画がある
- ☐ メニューと価格、予約とキャンセルのルールが文章になっている
- ☐ 売上・新規・既存・次回予約率などの定義が決まっている
- ☐ 毎月の数字を、同じ形の表で記録できている
- ☐ 予約・顧客・カルテの記録を、店をまたいで見られる仕組みがある
- ☐ 2店舗目の損益分岐点(必要な月の売上と客数)を出している
店長を任せられる人を育てるには、スタッフが続けて働ける店であることが前提になります。辞める理由と定着の対策は、美容室のスタッフが辞める理由と定着の対策にまとめています。2店舗目の人員を外から募る場合の求人票の書き方と面接の進め方は、美容室の採用で説明しています。美容所として届け出る店なら、2店舗目も保健所への開設届と検査確認が必要です。届出の順番は美容室の開業届と保健所の手続きにまとめています。
損益分岐点の出し方は、美容室の利益率と損益分岐点の計算で説明しています。1店舗目の数字の記録がまだない場合は、売上管理の始め方から始めてください。
店舗管理システムを選ぶときに確かめること
店舗管理システムと呼ばれる製品には、飲食店や小売店の仕入れ・在庫を中心にしたものから、予約制の店の予約と顧客を中心にしたものまで、幅があります。顧客管理のシステムそのものの選び方はサロンの顧客管理システム(CRM)の選び方で説明しています。サロンの多店舗管理では、次の点を確かめます。
| 確かめること | 理由 |
|---|---|
| 予約・顧客・カルテ・会計が同じ仕組みにあるか | 新規と既存の区別や次回予約率を、記録からそのまま数えられる |
| 店ごとの数字と、全店をまたいだ集計の両方を見られるか | 店長は自店を、本部は全店を同じ定義で見られる |
| 店をまたいで顧客の履歴を見られるか、見られる範囲を設定できるか | 店をまたぐお客様の扱いと、顧客情報のルールに合わせられる |
| スタッフ別・店舗別の次回予約率や稼働率を見られるか | 店を比べる表を手作業で作らずに済む |
| 勤怠とシフトを店ごとに記録できるか | 店別の稼働率や人件費を出せる |
| 店舗が増えたときの費用 | 店舗数に応じた費用で、出店の計画に入れられる |
Leporto は、予約・顧客・カルテ(音声カルテを含む)・売上と集客の分析・LINE 連携・スタッフの勤怠をまとめた予約管理システムで、多店舗と FC 本部の機能があります。スタッフの勤怠では、打刻、シフトの登録、有給の申請、経費の申請を、アプリか LINE の LIFF(LINE の中で開く画面)から行えます。多店舗の管理画面や本部では、店舗と同じ分析を見られるうえ、店舗をまたいだ集計もできます。分析では、新規と既存ごとの売上・客数・次回予約率、実リピート率、スタッフ別の次回予約率、稼働率などを見られます。
料金(税抜)は、スタンダードが1店舗目 月30,000円(スタッフ5名まで)、2店舗目以降 月10,000円、スタッフ追加1名 月2,000円です。FC 本部機能は月150,000円です。契約は1年です。初期費用は設定の代行を頼む場合1店舗30,000円(データ移行を含む)、自分で設定すれば無料となります。詳しくは多店舗とFC本部機能の料金をご覧ください。
よくある質問
何店舗目から本部の仕組みが必要ですか
2店舗目からです。経営者が両方の店に毎日立てなくなった時点で、数字の定義と共有のルールがないと、店の状態をつかめなくなります。本部の専任の人を置くのは店舗が増えてからでも構いませんが、決まりは2店舗目の前に作っておくと楽です。
店舗ごとに予約システムが違っていても管理できますか
数字の定義を揃えれば、表に書き写して比べることはできます。ただし、店ごとに数え方の仕組みが違うと、同じ定義にそろえる手間が毎月かかります。店をまたいで来るお客様の履歴もつながらないため、店が増えるほど同じ仕組みにまとめる利点が大きくなります。
店長に数字を見せると、プレッシャーになりませんか
数字の使い方しだいです。比較表を順位付けや叱責に使うと、店長は数字を隠したり、数え方を都合よく変えたりしがちです。数字は支援する店を決めるためのものだと最初に伝え、良い店のやり方を共有する場にすると、店長の協力を得やすくなります。数字を店長やスタッフの評価に使う場合の注意は、美容室の評価制度の作り方で説明しています。
店をまたいで来たお客様は、新規として数えるべきですか
決まりはありません。店ごとの集客の成果を見たいなら来店した店の新規、会社全体の集客を見たいなら系列の既存として数えます。どちらにするかを決めて、全店で同じにすることが大切です。
