美容室の稼働率とは?計算方法と、スタッフ別・時間帯別の計算表

朝の光が入る美容室のフロア。四つの施術椅子のうち二つにだけケープが掛かり、残りの二つが空いている様子

美容室の稼働率は、「施術で埋まった時間÷予約を受けられた時間×100」で計算します。ただし、分母を出勤時間にするか予約を受けられる時間にするか、分子を施術時間にするか予約枠の時間にするかで、同じ店でも数字が大きく変わります。そのため、計算を始める前に定義を決め、毎月同じ決め方で数えることがいちばん大切です。この記事では、定義の決め方、スタッフ別・曜日別・時間帯別の計算表と記入例、数字の読み方、売上や1時間あたりの生産性との関係を順に説明します。

美容室の稼働率とは

稼働率は、お客様を迎えられる時間のうち、実際に施術で埋まった時間の割合です。ホテルの客室稼働率が「売れた部屋÷売れる部屋」で表されるのと同じで、サロンでは「売れる時間」のうちどれだけを売れたかを表します。

売上の合計だけを見ていると、「忙しい日は満席、暇な日はがらがら」という偏りは見えません。稼働率を曜日や時間帯ごとに出すと、空いている時間がどこに集まっているかがわかります。空いている時間は、人件費や家賃がかかっているのに売上を生まない時間です。どこが空いているかがわかれば、シフトや予約の受け方、集客の打ち手を具体的に決められます。人件費や家賃を含めた毎月の経営の数字の全体像は、美容室経営・サロン経営の基本で一覧にしています。

なお、美容室の稼働率について、公的な機関がまとめた業界平均の数字は、この記事を書いた時点で確認できませんでした。海外の記事などに「70〜80%が適正」といった目安が載っていることがありますが、分母と分子の定義が自店と同じとは限りません。目安と比べるより、自店の数字を同じ定義で毎月追うほうが判断に使えます。

稼働率の計算方法(基本の式)

基本の式は次のとおりです。

稼働率(%)=分子(埋まった時間)÷分母(受けられた時間)×100

式そのものは単純ですが、分母と分子に何を入れるかで意味が変わります。店の中で決めておくことは、次の2つです。

分母:「予約を受けられる時間」か「出勤時間」か

分母には、主に2つの考え方があります。

1つ目は、予約を受けられる時間です。出勤時間から、休憩、朝礼やミーティング、練習や教育、予約を止めている時間を引いたものです。「お客様を入れられたのに入らなかった時間」がどれだけあるかを見るのに向いています。予約表の空き具合と考え方が近いので、集客や予約の受け方を見直すときに使います。

2つ目は、出勤時間です。スタッフが店にいる時間の全部を分母にします。休憩や練習の時間も含むため、数字は1つ目より低く出ます。人件費に対して施術の時間がどれだけあるかを見たいとき、つまりシフトの組み方を見直すときに向いた分母です。

分子:「施術時間」か「予約枠の時間」か

分子にも、2つの考え方があります。

1つ目は、予約枠の時間です。予約表で埋まっている枠の長さを足したものです。予約表から数えられるので手間が少なく、予約が入った時点で数えられるため、これからの予定の稼働率(予測)も出せます。

2つ目は、実際の施術時間です。お客様が来店してから施術を終えるまでの時間を、会計や記録から数えます。当日キャンセルや無断キャンセルで空いた時間、予定より早く終わった時間が反映されるので、実際の働き方に近い数字になります。

4つの組み合わせと使い分け

分母と分子の組み合わせは4通りあります。目的に合わせて1つを「店の稼働率」と決め、必要なら2つ目を補助に使います。

分子 \ 分母予約を受けられる時間出勤時間
予約枠の時間予約表の埋まり具合。将来の予定にも使える。集客や予約の受け方の見直しに向く予約の段階で、出勤した時間がどれだけ予約で埋まっているか。シフトの組み方の見直しに向く
実際の施術時間受けられた時間のうち、実際に施術した割合。キャンセルの影響も表れる店にいた時間のうち施術した割合。人件費に対する働き方を見るのに向く

この記事では、特に断りがなければ「実際の施術時間÷予約を受けられる時間」を稼働率と呼びます。あわせて、シフトを見るときの補助として「実際の施術時間÷出勤時間」を「出勤基準の稼働率」と呼びます。

分母と分子で迷いやすい時間の扱い

定義を決めても、細かい時間の扱いが人によって違うと、数字を比べられなくなります。次の表のように、迷いやすい時間の扱いを先に決めておきます。

時間扱いの例決めておく理由
休憩分母から引く予約を受けられないため
朝礼・ミーティング・清掃予約を止めているなら分母から引く予約を受けられない時間かどうかで決める
練習・教育予約を止めているなら分母から引く。出勤基準の稼働率では引かない育成中のスタッフの数字が低く見える理由を分けるため
カウンセリング施術時間に含めるお客様に対応している時間のため
カラーの放置時間担当者がほかのお客様に入れるなら、分子は予約1件ごとに数える同時に2人を担当すると、分子が分母を超えることがある
受付・電話・会計施術時間に含めない店全体の仕事で、担当者ごとには数えにくいため
当日キャンセル・無断キャンセル予約枠の時間には含める。施術時間には含めない2つの差がキャンセルで失った時間になる

放置時間に別のお客様を担当する店では、分子を「担当者の手がふさがっていた時間」で数えるか、「お客様ごとの施術時間の合計」で数えるかを決めます。後者で数えると、稼働率が100%を超えることがあります。どちらでも構いませんが、途中で変えないことが大切です。

「人の稼働率」と「席の稼働率」を分ける

ここまでの計算は、スタッフ1人ひとりの時間をもとにした「人の稼働率」です。これとは別に、セット面やベッドの数を分母にした「席の稼働率」を出す方法もあります。

スタッフの数よりセット面が多い店では、席の稼働率が低くても人の稼働率は高い、ということが起こります。人を増やせば売上を伸ばせるか、席を増やす必要があるかを考えるときは、2つを分けて見てください。この記事の計算表は、人の稼働率を対象にしています。

スタッフ別・曜日別・時間帯別の計算表

稼働率は、店全体の1つの数字だけでは使い道が少なくなります。スタッフ別、曜日別、時間帯別に分けると、どこに手を打てばよいかが見えてきます。

計算表のテンプレート

エクセルやGoogleスプレッドシートで、1行に「1人のスタッフの1日の1つの時間帯」を書きます。時間帯は「10〜13時」「13〜16時」「16〜閉店」のように3つほどに分けると、記入の手間と見やすさの釣り合いが取れます。

列見出し入れるもの式の例(2行目)
A日付2026/10/6 など—
B曜日日付から自動で出す=TEXT(A2,"aaa")
C時間帯10〜13時など—
Dスタッフ名前—
E出勤時間(時間)その時間帯に店にいた時間—
F予約を受けない時間休憩、練習、ミーティングなど—
G予約を受けられる時間出勤時間−予約を受けない時間=E2-F2
H予約枠の時間予約表で埋まっていた時間(キャンセルを含む)—
I施術時間実際に施術した時間—
J売上その時間帯の施術の売上—
K稼働率施術時間÷予約を受けられる時間=IFERROR(I2/G2,"")
L出勤基準の稼働率施術時間÷出勤時間=IFERROR(I2/E2,"")
Mキャンセルで失った時間予約枠の時間−施術時間=H2-I2

M列は、予定より早く終わった時間も含むため、キャンセルの時間とぴったり一致するとは限りません。おおよその目安として見てください。

スタッフ別や曜日別の集計は、行ごとの率を平均するのではなく、時間を合計してから割ります。たとえばスタッフAの1か月の稼働率は、=SUMIFS(I:I,D:D,"A")/SUMIFS(G:G,D:D,"A") のように、施術時間の合計を予約を受けられる時間の合計で割ります。率の平均を取ると、短い時間帯の数字が大きく効いてしまい、実際とずれるためです。

毎日の記入が大変なら、時間は15分や30分の単位で数えても構いません。予約表を30分の枠で区切り、埋まった枠を数えて0.5時間ずつ足していく方法なら、予約表を見ながら閉店後に数分で書けます。

記入例1:スタッフ別の1週間(仮の数字)

ここからの数字は、計算の流れを示すために作った仮の数字です。実在の店舗の実績ではなく、良し悪しの目安でもありません。

スタッフ3人の店で、ある1週間を集計した例です。スタッフCはデビューしたばかりで、週に10時間の練習があるとします。

スタッフ出勤時間予約を受けない時間予約を受けられる時間施術時間稼働率出勤基準の稼働率
A45時間5時間(休憩)40時間30時間75.0%66.7%
B36時間4時間(休憩)32時間20時間62.5%55.6%
C45時間15時間(休憩5・練習10)30時間12時間40.0%26.7%
店全体126時間24時間102時間62時間60.8%49.2%

店全体の稼働率60.8%は、施術時間の合計62時間を、予約を受けられる時間の合計102時間で割った数字です。3人の稼働率の平均(59.2%)とは一致しません。上で説明したとおり、時間を合計してから割ります。

この例では、Cの稼働率の低さが店全体を下げています。ただし、Cは練習の時間を分母から引いても40.0%なので、予約そのものが少ないことがわかります。Cへの指名がまだ少ない時期なら、新規のお客様をCに案内する、Cのメニューの掲載を見直すといった手が考えられるでしょう。

記入例2:曜日別・時間帯別(仮の数字)

別の仮の店で、スタッフ3人が10〜19時に出勤する前提です。計算を簡単にするため、休憩はないものとしています。火曜から金曜を「平日」、土曜と日曜を「土日」にまとめた1週間の集計です。

曜日時間帯予約を受けられる時間施術時間稼働率
平日(4日)10〜13時36時間24時間66.7%
平日(4日)13〜16時36時間14時間38.9%
平日(4日)16〜19時36時間25時間69.4%
土日(2日)10〜13時18時間16時間88.9%
土日(2日)13〜16時18時間17時間94.4%
土日(2日)16〜19時18時間12時間66.7%
合計—162時間108時間66.7%

週の合計は66.7%ですが、時間帯別に見ると、平日の13〜16時が38.9%と低く、土日の昼が90%前後と高いことがわかります。合計だけを見ていると、この偏りは見えません。

稼働率の読み方:低い時間と高い時間に何をするか

数字が出たら、稼働率が低い時間と高い時間に分けて考えます。同じ「低い」でも、原因によって打ち手が違います。

状態まず確かめること打ち手の例
特定の曜日・時間帯だけ低いその時間帯に予約を受け付けているか。予約サイトや自社の予約ページで空きが表示されているかシフトを薄くする。その時間帯に練習や事務の時間を移す。次回の予約を提案するときに空いている時間を案内する
特定のスタッフだけ低い指名の数、新規の担当数、メニューの掲載のされ方新規の割り振りを見直す。メニューや写真の掲載を整える
予約枠は埋まっているのに施術時間が少ない当日キャンセルと無断キャンセルの件数前日の確認の連絡、キャンセルの規約を見直す
店全体がずっと低い新規客数と再来客数の推移集客の経路や、再来の仕組みを見直す
特定の時間帯が100%近い状態が続くその時間帯に予約を断っていないか。スタッフの休憩が取れているか混む時間帯にシフトを厚くする。空いている時間帯に予約を移してもらえるよう案内する

サロンの空き時間の対策:値引きの前に考えること

稼働率が低い時間帯への打ち手として、値引きはすぐに思いつきます。しかし、割引で埋めると客単価が下がり、稼働率が上がっても売上が増えないことがあります。値引きの前に、シフトを空いている時間に合わせられないか、次回の予約の提案で空いている時間を案内できないかを考えるとよいでしょう。予約の段階で空き枠を減らす方法は、次回予約率の計算と上げ方でも扱っています。

予約枠の時間と施術時間の差が大きい場合は、キャンセルで失った時間が多いことを示しています。キャンセルを減らす方法は、サロンの無断キャンセル対策で、規約の文例と予約確認の流れを紹介しています。

稼働率が高すぎるとき

稼働率が高いことは、必ずしも良いことではありません。100%に近い状態が長く続くと、新しいお客様の予約を受けられず、スタッフの休憩や練習の時間も削られます。高い時間帯が続くなら、スタッフを増やすか、メニューの時間や価格を見直す時期かもしれません。

稼働率と売上の関係:売上=客数×客単価と1時間あたりの生産性

売上を「時間」で分けて考える

サロンの売上は、売上管理の始め方で説明したとおり、売上=客数×客単価に分けられます。予約制の店では、客数は「施術に使えた時間」に縛られています。そこで、売上を時間の側から分けてみましょう。

売上=予約を受けられる時間×稼働率×施術1時間あたりの売上

施術1時間あたりの売上は、「売上÷施術時間」で出します。この式から、売上を増やすには、予約を受けられる時間を増やす、稼働率を上げる、施術1時間あたりの売上を上げる、の3つの道があることがわかります。稼働率はこのうちの1つにすぎません。

この式の3つの要素と、それぞれを伸ばす道を次の図に示します。

売上を時間の側から分けた図。売上は、予約を受けられる時間×稼働率×施術1時間あたりの売上で表せる。売上を増やす道は、予約を受けられる時間を増やす、稼働率を上げる、施術1時間あたりの売上(売上÷施術時間)を上げる、の3つで、稼働率はそのうちの1つにすぎない。

スタッフの生産性(出勤1時間あたりの売上)

スタッフの生産性を比べるときは、「出勤1時間あたりの売上」を使う方法があります。式は「売上÷出勤時間」で、これは「出勤基準の稼働率×施術1時間あたりの売上」と同じです。

記入例1のスタッフに、仮の売上を当てはめてみます。

スタッフ施術時間出勤時間売上(仮)施術1時間あたりの売上出勤基準の稼働率出勤1時間あたりの売上
A30時間45時間240,000円8,000円66.7%約5,333円
B20時間36時間180,000円9,000円55.6%5,000円
C12時間45時間72,000円6,000円26.7%1,600円

稼働率だけを見ると、AはBより10ポイント以上高くなっています。ところが、施術1時間あたりの売上はBのほうが高く、出勤1時間あたりの売上で比べると差は小さくなります。Bには、空いている時間を埋める打ち手が効きやすいはずです。Aは時間が埋まりつつあるので、施術1時間あたりの売上を上げる打ち手(メニューの組み合わせの提案など)を考える段階です。

このように、稼働率は「どの道で売上を伸ばすか」を選ぶための数字です。稼働率だけで評価したり、スタッフの給与を決めたりすると、短い施術を詰め込むほうが有利になるなど、ねらいとずれることがあります。売上や客単価とあわせて見てください。数字を評価に使うときの注意は、美容室の評価制度の作り方で説明しています。

実績の稼働率と、これからの予約の稼働率(予測)

ここまでの計算は、過ぎた期間の「実績」です。これに加えて、すでに入っている予約から「来週や来月の予約の埋まり具合」を出すと、手を打つ時期を早められます。たとえば、来週の平日午後の予約枠がまだ空いているとわかれば、その時間帯の案内を先に出せます。

予測を出すときの分子は、施術時間ではなく予約枠の時間になります。予約が入るのは直前になることも多いため、予測の数字は日が近づくにつれて上がるのがふつうです。先週の同じ時点の数字と比べると、予約の入り方が早いか遅いかを判断しやすくなります。

表計算ソフトでは、予約表の枠の時間を毎日集計し直す手間がかかります。予約管理システムによっては、予約の記録から稼働率を集計できるものがあります。Leporto の分析機能でも、稼働率を実績と予測の両方で確認できます。Leporto の稼働率は、施術の時間(予約のメニューの所要時間と、会計で追加した施術の時間の合計)を、シフトの出勤予定時間で割った値です。分母が出勤時間なので、上の「4つの組み合わせ」の表では「出勤時間」の列にあたり、この記事の「出勤基準の稼働率」に近い考え方です。ただし分子は、施術にかかった時間を測ったものではなく、メニューの所要時間をもとにしています。月ごとに、店全体とスタッフ別で見られ、今月から2か月先までの予測も確かめられます。分析で見られる数字は、売上・集客の分析の機能ページで紹介しています。

管理画面の稼働率の画面では、月ごとの稼働率と売上の動きをグラフで、勤務時間・実働時間・稼働率などを表で確かめられます(表示はデモデータ)。

Leporto の管理画面(アナリティクスの稼働率の実績)。店舗全体の 2026 年 1〜10 月の稼働率と売上の折れ線グラフと、月ごとの勤務時間・実働時間・稼働率・実質の稼働率・実対応件数・新規と既存の次回予約率の表。数字はデモデータ

よくある質問

美容室の稼働率は何%なら良いのですか

公的な機関がまとめた美容室の稼働率の業界平均は、この記事を書いた時点で確認できませんでした。分母と分子の定義によって数字は大きく変わるため、他店や他の記事の数字と比べても判断は難しくなります。まずは自店の定義を決め、前の月や前の年の同じ月と比べてください。100%に近い時間帯が続く場合は、予約を断っていないかも確かめます。

1人で営業しているサロンでも計算したほうがよいですか

計算したほうが判断の材料になります。1人のサロンでは、空いている時間帯をほかのスタッフで埋めることができないため、曜日別・時間帯別の稼働率が特に役立ちます。空いている時間帯を休みや仕込みの時間に回すか、予約を受ける時間にするかを決める材料にしてください。

稼働率と回転率はどう違いますか

稼働率は「時間」の割合で、回転率は一般に、1つの席を1日に何人のお客様が使ったかという「人数」の指標です。施術時間の短いメニューが多い店では、回転率が高くても稼働率は低い、ということもあります。予約制のサロンでは、メニューごとに施術時間が違うため、時間で見る稼働率のほうが比べやすくなります。

当日キャンセルや無断キャンセルはどう数えればよいですか

予約枠の時間には含め、施術時間には含めない、と決めておくと扱いやすくなります。そうすれば、「予約枠の時間−施術時間」でキャンセルによって失った時間のおおよそがわかります。キャンセルが多い時間帯がわかれば、前日の確認の連絡などの対策を、その時間帯に絞って打つことも可能です。

毎日記録するのが大変です

最初は、1週間だけ、または毎月の決まった1週間だけ記録する方法でも傾向はつかめます。時間を30分単位で数えれば、予約表を見ながら閉店後に短い時間で書けます。続けるうちに手間が負担になったら、予約の記録から自動で集計できる仕組みを検討する時期です。