売上管理の始め方(サロン・店舗向け):毎月見る5つの数字と表の作り方

サロンの売上管理は、売上の合計を記録するだけでは足りません。売上=客数×客単価に分けて、月ごとに表へ書くところから始めるのが基本です。客数をさらに「新規客数」と「再来客数」に分けておけば、売上が下がった月に「お客様が減ったのか、1回あたりの金額が下がったのか」がすぐに分かります。以下では、管理する項目と数え方、エクセルやGoogleスプレッドシートで作る表と関数、前年同月比などの比べ方、毎月見る5つの数字の順に説明します。
売上管理の意味と目的
売上管理は、売上の実績を集計し、前の月や前の年、目標と比べて、次に何をするかを決めるための作業です。目的は大きく3つあります。今の売上がどのくらいかを正しくつかむこと、目標や前年との差を早めに見つけること、そして打った手の効果を翌月以降の数字で確かめることです。
一般の企業向けの解説では、取引先別・商品別の集計や、原価と粗利の管理まで含めて説明されることが多くあります。予約制のサロンでは、取引先が個人のお客様で、売っているのは主に施術です。そのため、「何人が来たか」「そのうち初めての人は何人か」「1回いくら使ったか」を見るほうが、次の打ち手につながります。売上の数字が、人件費や家賃などの費用と合わせて経営の数字の中でどこに位置するかは、美容室経営・サロン経営の基本で一覧にしています。
なお、この記事で作る表は、経営の判断に使う集計表です。確定申告などの税務で求められる帳簿の代わりにはなりません。帳簿の付け方や保存のしかたは、国税庁の案内を確かめるか、税理士に相談してください。
売上を3つの数字に分ける
売上=客数×客単価
その月の売上は、来店したお客様の延べ人数(客数)と、1回の来店あたりの金額(客単価)のかけ算で表せます。売上が前の月より下がったとき、客数と客単価のどちらが下がったのかで、打つ手が変わります。
客数=新規客数+再来客数
客数は、初めて来店した人(新規)と、2回目以降の人(再来)に分けます。新規客数は主に集客の結果で、再来客数は主に接客や次回の提案の結果です。次回の提案がどれだけ予約につながったかは、次回予約率の計算方法と取り方の方法で数えられます。合計だけを見ていると、新規が増えて再来が減った月も「客数は横ばい」に見えてしまいます。
ここまでの2つの式を図にすると、次のようになります。

来店頻度
同じお客様が、ある期間に何回来たかを表すのが来店頻度です。サロンは1か月に何度も来る業種ではないことが多いため、月ごとの来店頻度はほとんど動きません。3か月や1年の単位で見るほうが、変化を読み取りやすくなります。
管理する項目と数え方を先に決める
売上管理でいちばん崩れやすいのは、月によって数え方が変わることです。表を作る前に、次の定義を決めて表の1枚目に書いておきます。
| 数字 | 定義(この記事での決め方) | 計算 | 決めておくこと |
|---|---|---|---|
| 売上 | その月(1日〜末日)に会計した金額の合計 | レジや予約台帳の月合計 | 税込か税抜か。施術と店販を合わせるか。回数券やプリペイドを、売った月と使った月のどちらで数えるか |
| 延べ客数 | その月に施術を受けた来店の回数 | 同じ人が2回来れば2と数える | 店販だけの来店を入れるか |
| 実客数 | その月に1回以上来店した人の数 | 同じ人が2回来ても1と数える | 顧客台帳で人を見分ける方法(電話番号など) |
| 新規客数 | 初回来店日がその月にある人の数 | 顧客台帳の初回来店日で数える | 長く空いてから戻った人を新規に入れない |
| 再来客数 | 延べ客数のうち、新規ではない来店の回数 | 延べ客数−新規客数 | — |
| 客単価 | 1回の来店あたりの売上 | 売上÷延べ客数 | 売上と同じく、税込か税抜かをそろえる |
| 来店頻度 | 1人あたりの来店回数 | 延べ客数÷実客数 | 見る期間(1か月・3か月・1年) |
| 新規の再来率 | 新規客のうち、初回から決めた日数以内に2回目の来店があった人の割合 | 2回目に来た人数÷その月の新規客数 | 日数(例:60日、90日)。業種の来店周期に合わせる |
店販の仕入れがある店では、原価と粗利(売上−原価)も記録すると、店販が利益にどれだけ役立っているかが分かります。ただし、最初は上の表の数字だけで始め、慣れてから足すと続けやすくなります。
新規客数の数え方には注意が必要です。予約サイトの予約で名前の書き方が違うと、以前来たお客様を新規として二重に登録してしまうことがあります。会計のときに顧客台帳を電話番号などで検索し、重複していないかを確かめてから登録します。
1年以上空いてから戻ったお客様は、新規ではなく再来として数えます。こうした「休眠から戻った人」を別に知りたい場合は、再来客数の内訳として列を足してください。
新規の再来率は、その月のうちには確定しません。たとえば60日以内で数えるなら、7月の新規客の再来率は9月末に分かります。表には「何月の新規客か」を書き、確定した月に記入してください。計算の手順はリピート率の計算と上げ方で詳しく説明しています。
月次の売上管理表の作り方(エクセル・Googleスプレッドシート)
1か月を1行にして、次の列を左から並べます。列の記号はエクセルとGoogleスプレッドシートで同じです。2行目に式を入れ、下の行へコピーすれば使えます。
| 列 | 見出し | 入れるもの | 2行目の式の例 |
|---|---|---|---|
| A | 月 | 2026/7/1 のように月の初日を入れ、表示形式で「2026年7月」と見せる | — |
| B | 営業日数 | その月に営業した日数 | — |
| C | 売上 | 決めた定義での月の合計 | 手入力、または下の関数 |
| D | 新規客数 | 初回来店日がその月の人数 | 手入力、または下の関数 |
| E | 再来客数 | 新規ではない来店の回数 | 手入力、または下の関数 |
| F | 延べ客数 | 新規+再来 | =D2+E2 |
| G | 実客数 | その月に来た人の数 | 手入力、または下の関数 |
| H | 客単価 | 売上÷延べ客数 | =IFERROR(C2/F2,"") |
| I | 来店頻度 | 延べ客数÷実客数 | =IFERROR(F2/G2,"") |
| J | 新規比率 | 延べ客数のうち新規の割合 | =IFERROR(D2/F2,"") |
| K | 前年同月の売上 | 1年前の同じ月の売上 | 12行上のC列(例:14行目なら =C2) |
| L | 前年同月比 | 売上÷前年同月の売上 | =IFERROR(C2/K2,"") |
| M | 新規の再来率 | 確定した月に、対象の月の行へ記入 | — |
| N | メモ | 値上げ、休業、キャンペーン、スタッフの増減など | — |
営業日数とメモの列は、数字が動いた理由を後から確かめるために置きます。値上げした月や、長めの休業があった月は、数字だけを見ると判断を誤りやすいためです。値上げの告知の時期と、前後で確かめる数字は、サロンの値上げの進め方にまとめています。
スタッフが複数いる店では、同じ列のシートをスタッフごとに作ると、誰の新規や再来が動いたかを確かめられます。最初は店全体の1枚から始め、毎月書けるようになってから増やすと続けやすくなります。
日々の来店記録から月の数字を出す関数
月の数字を手で数えるのが大変なら、来店ごとに1行ずつ書く「来店記録」のシートを別に作り、関数で月の表へ集計できます。来店記録には、A列に日付、B列にお客様番号、C列に区分(「新規」「再来」「店販のみ」のどれか)、D列に会計の金額、E列に担当スタッフを書きます。区分は、会計のときに顧客台帳で初回かどうかを確かめて入れてください。
月の表の2行目(A2に月の初日が入っている行)には、次のような式を入れます。EOMONTH関数は、A2の月の末日を返す関数です。
| 月の表の列 | 使う関数 | 式の例 |
|---|---|---|
| C 売上 | SUMIFS(条件に合う行だけを合計) | =SUMIFS(来店記録!$D:$D,来店記録!$A:$A,">="&$A2,来店記録!$A:$A,"<="&EOMONTH($A2,0)) |
| D 新規客数 | COUNTIFS(条件に合う行の数を数える) | =COUNTIFS(来店記録!$C:$C,"新規",来店記録!$A:$A,">="&$A2,来店記録!$A:$A,"<="&EOMONTH($A2,0)) |
| E 再来客数 | COUNTIFS | 上の式の「新規」を「再来」に変える |
| G 実客数 | UNIQUE・FILTER(重なりを除いて数える) | =IFERROR(COUNTA(UNIQUE(FILTER(来店記録!$B:$B,(来店記録!$A:$A>=$A2)*(来店記録!$A:$A<=EOMONTH($A2,0))))),0) |
区分を「店販のみ」にした行は、売上には入りますが、新規と再来のどちらにも数えられません。定義の表で決めたとおり、店販だけの来店を客数から外す形になります。UNIQUE関数とFILTER関数が使えない古いバージョンのエクセルでは、ピボットテーブルでお客様番号ごとに集計し、その行数を実客数にする方法があります。
前年同月比・前月比・目標達成率の出し方
売上は、何かと比べて初めて良し悪しを判断できます。比べる相手は主に、前年同月・前月・目標の3つです。
前年同月比は、表のL列のとおり「今月の売上÷前年同月の売上」で出します。サロンの売上には季節による増減があることが多いため、季節の影響を除いて比べたいときは前年同月を使います。前月比は「今月の売上÷前月の売上」で、3行目なら =IFERROR(C3/C2,"") です。月ごとの流れを追うのに向いていますが、季節の増減も一緒に表れる点に注意が必要です。
目標と比べたい場合は、N列の右に「O 目標」「P 達成率」の2列を足します。達成率の式は =IFERROR(C2/O2,"") です。達成したかどうかを文字で表示したいときは、=IF(O2="","",IF(C2>=O2,"達成","未達")) のようにIF関数を使います。目標は、前年同月の実績に、その年に打つ手(値上げやスタッフの増員など)を加味して決めると、根拠のある数字になります。
客数や客単価も、売上と同じ方法で前年同月や前月と比べられます。売上の比率だけでなく、どの数字が変わったかまで見ると、次の手を決めやすくなります。
記入例(仮の数字で計算の流れを示します)
ここからの数字は、計算の流れを示すために作った仮の数字です。実在の店舗の実績ではありません。また、良し悪しの目安を示すものでもありません。
| 月 | 売上(税抜) | 新規客数 | 再来客数 | 延べ客数 | 実客数 | 客単価 | 来店頻度 | 新規比率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 7月 | 1,400,000円 | 30 | 170 | 200 | 190 | 7,000円 | 1.05 | 15.0% |
| 8月 | 1,349,000円 | 25 | 165 | 190 | 182 | 7,100円 | 1.04 | 13.2% |
| 9月 | 1,326,000円 | 35 | 160 | 195 | 186 | 6,800円 | 1.05 | 17.9% |
9月の売上は7月より74,000円少なく、7月と比べて約5.3%の減少です。この差を、客数の変化と客単価の変化に分けてみます。
客数は200人から195人へ5人減りました。7月の客単価7,000円×5人で、客数の変化による差は35,000円の減少です。客単価は7,000円から6,800円へ200円下がりました。9月の客数195人×200円で、客単価の変化による差は39,000円の減少です。2つを合わせると74,000円になり、売上の差と一致します。
さらに客数を分けると、新規は30人から35人に増え、再来は170人から160人に減っています。合計の客数だけを見ると「5人減っただけ」ですが、実際には再来の減少を新規の増加が一部埋めている形です。
この例で次に確かめるのは、7月や8月に来た再来のお客様のうち9月に来なかった人と、客単価が下がった理由の2つです。新規比率が上がっているため、初回の割引がある店なら、新規客の単価が全体を下げている可能性があります。来店記録の区分を使って新規客と再来客の売上を分けて集計すれば、この点を確かめられます。客単価が下がった原因の分け方と上げる打ち手は、美容室の客単価の上げ方で説明しています。
毎月見る5つの数字と、次にすること
表の列は多くても、毎月の見直しでは次の5つを最初に見ます。数字が下がったときにどこを調べるかも合わせて決めておくと、見直しの時間が短くなります。
| 見る数字 | 比べる相手 | 下がったときに確かめること | 次の手の例 |
|---|---|---|---|
| 1. 売上 | 前年同月・目標 | 客数と客単価のどちらが下がったか | 下がった側の数字(2〜4)を調べる |
| 2. 新規客数 | 前年同月・前月 | 来店のきっかけ(予約サイト・紹介・SNSなど)ごとの人数 | 減った経路の掲載内容や広告費を見直す |
| 3. 再来客数 | 前年同月・前月 | 前回の来店から、いつもの周期を過ぎても来ていない人の一覧 | 次回の予約の提案や、来店の案内を送る |
| 4. 客単価 | 前月・前年同月 | 新規と再来の単価、メニューの組み合わせ、店販の売上 | メニューの提案や価格の見直しを検討する |
| 5. 新規の再来率 | 前の月の新規・前年 | 初回の担当スタッフ、初回のメニュー、次回の提案の有無 | 初回の接客と次回の提案の流れを見直す |
2の新規客数を来店のきっかけごとに数える方法と、経路別の表の作り方は、美容室の集客:集客経路の数え方と広告費の決め方で説明しています。
表を始めたばかりで前の年の数字がない場合は、前の月と比べ、メモの列で季節の要因を補います。
5つの数字は、どれか1つだけを上げようとしても続きません。たとえば新規を増やしても新規の再来率が低ければ、数か月後の再来客数は増えにくくなります。売上が下がった月は、まず1から順に見て、原因に近い数字を1つ選んで手を打ちましょう。そうすれば、翌月の表で効果を確かめやすくなります。客数を増やす余地があるかは、予約の枠がどれだけ埋まっているかでも確かめられます。計算のしかたはサロンの稼働率の計算をご覧ください。
下がった原因をスタッフ・メニュー・時間帯などの切り口で探す方法は、サロンの売上分析のやり方で説明しています。5の新規の再来率の数え方も、前に紹介したリピート率の計算の記事で説明しています。売上から費用を引いて手元にどれだけ残るかは、売上の表だけでは分かりません。利益率と原価率の計算式は美容室の利益率と原価率で説明しています。回数券を売っている店は、販売したときに受け取ったお金と、施術した回の売上をどう数えるかを先に決めておきます。前受金と売上の計上の時期は回数券の管理方法にまとめています。会計の記録をレジから取る場合は美容室のPOSレジの選び方を、店舗が2つ以上ある場合の数字のそろえ方は多店舗の店舗管理の方法をご覧ください。
エクセルで続けるか、システムで集計するか
エクセルやGoogleスプレッドシートは、多くの人が使い慣れていて、追加の費用をかけずに始められるのが利点です。列や式を店に合わせて自由に変えられるため、この記事の表のように自分の店の定義で数えることもできます。月の売上と客数の合計だけなら、表計算ソフトで十分に管理できます。
一方で、続けるうちに次のような手間が出てきます。新規と再来の区別は、会計のたびに顧客台帳で初回かどうかを確かめる必要があり、入力の漏れや間違いがそのまま数字に響きます。新規の再来率は、一人ひとりの来店の履歴をさかのぼらないと数えられません。複数のスタッフや店舗で同じファイルを更新すると、どれが最新かが分からなくなることもあります。
こうした作業に毎月かなりの時間を取られるようになったら、予約と顧客の記録から自動で集計する仕組みを検討する時期です。予約の記録とお客様の情報が同じ仕組みにまとまっていれば、新規と再来の区別や来店の履歴を、来店の記録からそのまま集計できます。予約・会計・カルテ・分析をどの順番で仕組みにするかはサロン・店舗のDXは何から始めるかで整理しています。Leporto は、予約・顧客・カルテと、売上や集客の分析を一つにまとめた予約管理システムです。分析でどの数字を見られるかは、売上・集客の分析の機能ページで紹介しています。
よくある質問
売上管理はエクセルとGoogleスプレッドシートのどちらがよいですか
この記事の表は、どちらでも同じ列と式で作れます。複数のスタッフや複数の端末から見る場合は、共有しやすいGoogleスプレッドシートが便利です。どちらを使う場合も、入力する人と入力する日を決めておくと、記入漏れを防げます。
表には毎日記入する必要がありますか
月次の表は、月に1回の記入で足ります。ただし、元になる日々の会計と来店の記録は、レジや予約台帳に毎日残しておく必要があります。月末に1か月分をまとめて思い出すと、新規と再来の区別があいまいになりやすいためです。
顧客台帳がなく、新規と再来を分けられません
まずは翌月から、会計のときに「初めての来店かどうか」を確かめて記録しましょう。過去の分を無理にさかのぼる必要はありません。紙のカルテがある店なら、カルテの有無で判断する方法もあります。
客単価は税込と税抜のどちらで計算しますか
どちらでも構いませんが、売上と客単価で同じほうを使い、途中で変えないことが大切です。表の1枚目の定義に、どちらで数えるかを書いておきます。
スタッフ別にも分けたほうがよいですか
スタッフが2人以上いる店では、分けると原因を探しやすくなるでしょう。来店記録に担当スタッフの列があれば、SUMIFSやCOUNTIFSの条件に担当を足すだけでスタッフ別に集計できます。ただし最初から細かく分けると続かないことがあるため、店全体の表を数か月続けてから足す方法をおすすめします。
