客単価の計算方法と美容室での上げ方:計算式、4つの要素への分け方、メニュー・店販・価格の打ち手

客単価の計算式は「客単価=売上÷客数」です。たとえば、ある月の売上が136万円で来店客数が200人なら、客単価は6,800円になります。美容室では、この客単価をさらにメニュー構成・追加メニューの率・店販の率・価格の4つに分けて見ると、どこを変えればよいかが分かります。打ち手は大きく、メニュー(構成と追加の提案)、店販、価格の3つです。どれも、お客様のカルテに残っている悩みや前回の施術を理由にして提案すると、押し売りにならずに続けられます。この記事では、計算式と仮の数字の計算例、4つの要素への分け方、下がった原因の分け方、新規と既存・スタッフ別の比べ方、打ち手の表、提案の例文の順に説明します。
客単価の計算方法:計算式と、4つの要素への分け方
客単価は、ある期間の売上を、その期間に来店したお客様の延べ人数で割った値です。
客単価 = 売上 ÷ 客数(来店客数・会計の件数)
同じお客様が月に2回来たら2人と数えます。売上の数え方(税込か税抜か、店販を含むか)は、毎月同じにしておくことが大切です。数え方の決め方は売上管理の始め方で説明しています。回数券や前受金がある店は、回数券を使った来店を売上と客数にどう入れるかも先に決めておきます。回数券の売上の扱いは、回数券の管理方法を参考にしてください。客単価は、客数や費用と並べて毎月見る経営の数字の1つです。ほかの数字との関係は美容室経営・サロン経営の基本で一覧にしています。
合計の客単価だけを見ていても、何を変えればよいかは分かりません。そこで、客単価を次の4つの要素に分けます。
| 要素 | 意味 | 出し方 |
|---|---|---|
| メニュー構成 | お客様が選ぶ主なメニューの組み合わせ | 主なメニューの売上÷来店客数(主メニューの平均単価) |
| 追加メニューの率 | トリートメントやヘッドスパなどを追加した人の割合 | 追加メニューを頼んだ人数÷来店客数 |
| 店販の率 | 店販の商品を買った人の割合 | 店販を買った人数÷来店客数(店販購買率) |
| 価格 | メニューと商品の値段そのもの | 価格表。上の3つすべてに効く |
4つの要素を式にすると、次のようになります。
- 技術の単価 = 主メニューの平均単価 + 追加メニューの率 × 追加メニューの平均額
- 店販の単価 = 店販購買率 × 店販を買った人の平均購入額
- 客単価 = 技術の単価 + 店販の単価
次の図は、この式を技術と店販の2つに分けて並べたものです。

計算例(仮の数字です)
ある月の記録が、来店客数200人、技術の売上124万円、店販の売上12万円だったとします。客単価は136万円÷200人で6,800円です。内訳は次のとおりです。
| 項目 | 数字 | 計算 |
|---|---|---|
| 主メニューの平均単価 | 5,600円 | 主メニューの売上112万円÷200人 |
| 追加メニューの率 | 30% | 追加した60人÷200人 |
| 追加メニューの平均額 | 2,000円 | 追加の売上12万円÷60人 |
| 技術の単価 | 6,200円 | 5,600円+30%×2,000円 |
| 店販購買率 | 15% | 店販を買った30人÷200人 |
| 店販を買った人の平均購入額 | 4,000円 | 店販の売上12万円÷30人 |
| 店販の単価 | 600円 | 15%×4,000円 |
| 客単価 | 6,800円 | 6,200円+600円 |
この形に分けておくと、「追加メニューの率を30%から35%にすると、客単価は100円上がる」のように、打ち手ごとの効き方を計算できます。目標を立てるときも、客単価の数字ではなく、どの要素をどれだけ動かすかで決められます。
客単価が下がった原因の分け方
客単価が下がったときは、前の月(または前年の同じ月)と、4つの要素を並べて比べます。売上全体の分け方や、客数と客単価のどちらが動いたかの見分け方は、サロンの売上分析のやり方で説明しています。この記事で扱うのは、客単価が下がったと分かったあとの手順です。
| 項目 | 前の月 | 今月 | 客単価への影響 |
|---|---|---|---|
| 主メニューの平均単価 | 5,600円 | 5,500円 | −100円 |
| 追加メニューの率 | 30% | 22% | −160円(−8%×2,000円) |
| 追加メニューの平均額 | 2,000円 | 2,000円 | 0円 |
| 店販購買率 | 15% | 15% | 0円 |
| 店販を買った人の平均購入額 | 4,000円 | 4,000円 | 0円 |
| 客単価 | 6,800円 | 6,540円 | −260円 |
この仮の例では、下がった260円のうち160円が追加メニューの率から来ています。この場合、まず確かめるのは、追加メニューの提案の流れが変わっていないかです。担当の入れ替わり、カウンセリングの時間の短縮、メニュー表の変更などが考えられます。主メニューの平均単価の100円は、次の章の「新規と既存の割合」で説明が付くかを確かめます。
要素ごとに、下がったときに確かめることの例を表にまとめます。
| 下がった要素 | 確かめること |
|---|---|
| 主メニューの平均単価 | カットだけのお客様や新規の割合が増えていないか。割引の大きいクーポンの利用が増えていないか |
| 追加メニューの率 | 提案の時間が取れているか。メニュー表で追加のメニューが見つけやすいか。特定のスタッフだけ下がっていないか |
| 店販購買率 | 施術中に使った商品の説明をしているか。在庫が切れていないか。季節の悩みに合う商品があるか |
| 店販の平均購入額 | まとめ買いをしていたお客様が来ていないか。価格の安い商品に偏っていないか |
新規と既存、スタッフ別に分けて比べる
新規と既存で客単価を分ける
初めてのお客様は、初回の割引や、まずはカットだけを試す人が多いため、既存のお客様より客単価が低くなりやすい傾向があります。そのため、新規の割合が変わるだけで、全体の客単価が動きます。
| 区分 | 客数 | 客単価 | 売上 |
|---|---|---|---|
| 新規 | 40人 | 5,800円 | 232,000円 |
| 既存 | 160人 | 7,050円 | 1,128,000円 |
| 合計 | 200人 | 6,800円 | 1,360,000円 |
この仮の例で、新規が60人、既存が140人に変わったとします。新規と既存のそれぞれの客単価が同じでも、全体の客単価は6,675円に下がります(新規60人×5,800円+既存140人×7,050円=1,335,000円÷200人)。集客がうまくいった月に客単価が下がって見えるのは、このためです。
新規と既存を分けておけば、「新規の客単価」と「既存の客単価」を別々に追えます。新規の客単価は初回の割引の設計、既存の客単価は追加メニューと店販の提案の結果として読むと、打ち手を選びやすくなります。
スタッフ別に比べるときは、要素で比べる
スタッフごとの客単価を並べると、指名の多い人や、カラーの多い人が高く出ます。担当するお客様の層が違うので、客単価の合計だけで良し悪しを決めないことが大切です。スタッフ別の客単価は、予約管理システムの分析で出せる場合もあります。比べるなら、次のような表で、要素ごとに見ます。
| スタッフ | 来店客数 | 新規の割合 | 主メニューの平均単価 | 追加メニューの率 | 店販購買率 | 客単価 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| Aさん | ||||||
| Bさん | ||||||
| Cさん |
主メニューの平均単価は、担当するお客様の層で決まる部分が大きい数字です。一方、追加メニューの率と店販購買率は、提案のしかたの影響を受けやすい数字です。率の高いスタッフが何をしているかを聞き、店の手順にまとめると、ほかのスタッフも同じ流れで提案できます。率が低いスタッフを責める材料にはしないでください。担当する新規の人数が多い人は、率が低めに出ることもあります。
客単価を上げる打ち手の表:メニュー・店販・価格
打ち手は、4つの要素のどれに効くかで選びます。次の表は、打ち手、効く数字、効いたかどうかの確かめ方を並べたものです。
| 区分 | 打ち手 | 効く数字 | 確かめ方 |
|---|---|---|---|
| メニュー | よく一緒に頼まれる組み合わせを、セットのメニューとして載せる | 主メニューの平均単価 | セットの件数と、単品の件数の変化を3か月比べる |
| メニュー | 所要時間の長いメニューの価格が、時間に見合っているか見直す | 主メニューの平均単価、1時間あたりの売上 | メニューごとの所要時間と売上を並べる |
| メニュー | 追加のメニューを、予約ページと店内のメニュー表で見つけやすくする | 追加メニューの率 | 予約時に追加された件数と、来店後に追加された件数を分けて数える |
| メニュー | カウンセリングで、カルテの悩みに合う追加メニューを1つだけ紹介する | 追加メニューの率 | スタッフ別の追加メニューの率を月ごとに見る |
| 店販 | 施術中に使った商品の名前と、家での使い方を伝える | 店販購買率 | 店販購買率と、2回目に同じ商品を買った人の数 |
| 店販 | 前回買った商品がなくなるころに、使い心地を聞く | 店販購買率、平均購入額 | 店販のリピート購入の件数 |
| 店販 | 商品を、悩み別(乾燥・広がり・頭皮など)に並べる | 店販購買率 | 並べ方を変える前後の店販購買率 |
| 価格 | メニューの価格を改定する | すべての要素 | 改定の前後で、客数・再来率・客単価を並べる |
| 価格 | 初回の割引の幅と、2回目の案内を見直す | 新規の客単価 | 新規の客単価と、新規の再来率をセットで見る |
所要時間と価格の関係は、出勤時間のうち施術に使った時間の割合(稼働率)と一緒に見ると判断しやすくなります。予約が埋まっていて客数を増やせない時間帯がある店は、客単価を上げる打ち手の効果が売上に出やすくなります。計算のしかたは美容室の稼働率の計算方法を見てください。
価格の改定は、すべての要素に一度に効く一方で、客数や再来率にも影響するおそれがあります。告知の時期や例文、改定の前後の数字の確かめ方は美容室・サロンの値上げの進め方で扱っています。客単価が上がっても、手元に残る利益は材料費や人件費の割合で変わります。利益率と原価率の計算は美容室の利益率と原価率を参考にしてください。
打ち手を選ぶ順番
一度にいくつも変えると、翌月に数字が動いても、どの打ち手が効いたのか分かりません。1か月に1つか2つに絞り、次の順で考えると無理がありません。
- 原因の分け方の表で、いちばん下がっている要素、または伸ばせそうな要素を1つ選ぶ
- その要素に効く打ち手を、表から1つか2つ選ぶ
- 始める前の数字を記録し、確かめる日(翌月の同じ日など)を決める
- 確かめる日に、選んだ要素と、客数・再来率が下がっていないかを見る
客単価が上がっても、再来率が下がれば、半年後の売上は減ることがあります。客単価と一緒に、新規の再来率や次回予約率も見ておくと安心です。再来率の計算は美容室のリピート率の計算方法と上げ方にまとめています。
カルテの記録を使った提案の例文
押し売りに感じられる提案には、「理由が分からない」「断りにくい」「値段と時間が後から分かる」という特徴があります。反対に、カルテに残っている悩みや前回の施術を理由にし、値段と時間を先に伝え、断ってもよいことが伝わる提案は、お客様が選びやすくなります。
次の例文は、カルテにそれぞれの記録がある場合の言い方です。店のメニューと価格に合わせて書き換えてください。
| カルテの記録 | 提案の例文 |
|---|---|
| 前回「毛先のパサつきが気になる」と記録がある | 「前回、毛先のパサつきを気にされていましたが、その後いかがですか。今日のカラーに、毛先のトリートメントを足すこともできます。プラス○○円で、時間は15分ほど延びます。今日でなくても大丈夫です」 |
| 頭皮の乾燥やかゆみの記録がある | 「前回、頭皮の乾燥のお話がありました。シャンプーのときに、頭皮用のケアを足すメニューがあります。○○円で10分ほどです。気になる日だけでも使えます」 |
| 前回のカラーから3か月以上たっている | 「前回のカラーから3か月ほどたっていますね。今日はカットのご予約ですが、根元の色の差が気になるようでしたら、次回のご予約のときにカラーも入れられます」 |
| 施術中に使った商品について質問があった | 「今日使ったのはこちらのオイルです。乾かす前に、毛先に1〜2滴つけるだけです。量の目安を書いておきますね。ご自宅で試したい場合は、お会計のときにお声がけください」 |
| 前回店販の商品を買っている | 「前回お持ち帰りいただいたシャンプーは、使ってみていかがでしたか。合わないところがあれば、別のものもご紹介できます」 |
どの例文も、提案の理由をカルテの記録(お客様が前に話したこと)に置いています。そのうえで、値段と延びる時間を先に伝え、「今日でなくても」「気になる日だけでも」のように断ってもよい言葉を添えています。
提案したこと、お客様の反応、次に話すことは、カルテに一行で残しましょう。次の担当が同じ提案を繰り返さずに済み、断られた提案を何度もしないための記録にもなるからです。カルテに書く項目の詳しい説明は、美容室の顧客管理にあります。
Leporto で客単価の要素を見る
Leporto は、予約・顧客・カルテ(音声カルテを含む)と、売上と集客の分析をまとめた、経営改善型の予約管理システムです。分析では、新規・既存・全体のそれぞれについて、平均客単価、技術の売上と店販の売上、店販購買率を見られます。新規と既存の客単価の差や、店販の率の変化を、分析の数字で確かめられるということです。スタッフ別の客単価も見られるので、前の章の表の「客単価」の列はこの数字で埋められます。商品のABC分析も用意されています。
管理画面の「アナリティクス」では、来店のきっかけ別に新規客数と再来率を見られます。客単価を上げる打ち手を試すときに、再来率が下がっていないかを一緒に見るときに使えるでしょう。提案の内容をカルテや音声カルテに残しておけば、次の来店のときにほかのスタッフも確かめられるので、同じ提案の繰り返しを防げます。見られる数字は売上・集客の分析の機能ページをご覧ください。
よくある質問
美容室の客単価の平均はいくらですか
この記事では、平均の金額を載せていません。公的な統計の数字を、この記事の作成時に公式のページで確かめられなかったためです。出回っている平均の数字は、調査の対象(お客様への調査か、店への調査か)、年、税込か税抜か、店販を含むかによって変わります。自店の判断には、前の月や前年の同じ月、新規と既存の差と比べるほうが役に立ちます。
客単価は、店販を含めて計算したほうがよいですか
合計の客単価は店販を含めて計算し、技術の単価と店販の単価も分けて出しておくのがおすすめです。店販を含めた数字だけでは、客単価が上がった理由が技術なのか店販なのかが分からないためです。どちらで数える場合も、毎月同じ数え方を続けてください。
値上げをせずに客単価を上げる方法はありますか
あります。この記事の4つの要素のうち、メニュー構成、追加メニューの率、店販の率の3つは、価格を変えずに動かせます。カルテの記録をもとに追加のメニューや商品を提案する方法は、価格の改定より客数への影響が小さく、試しやすい打ち手です。ただし、どの程度上がるかは店によって違うため、始める前と後の数字で確かめてください。
スタッフに店販の目標を持たせてもよいですか
目標を持たせるかどうかは、店が決めることです。ただ、販売の個数だけを目標にすると、お客様に合わない商品を勧める原因になることがあります。店販購買率や、同じ商品を2回目に買った人の数など、お客様が満足しているかどうかも分かる数字と組み合わせると、無理な販売を防ぎやすくなるはずです。歩合を設ける場合の計算の考え方は、美容室の歩合制の記事にまとめています。
客単価の計算で、客数は実人数と延べ人数のどちらを使いますか
延べ人数(会計の件数)を使います。同じお客様が月に2回来たら、2人です。実人数で割ると、1人のお客様がその期間に使った金額の平均という、別の数字になります。どちらの数え方にするかを決めたら、毎月同じ数え方を続けてください。
1人で営業している店でも、4つに分ける必要はありますか
1人の店でも、分けておくと打ち手を選びやすくなります。最初は、技術の売上と店販の売上を分けて記録し、追加メニューを頼んだ人数と店販を買った人数を数えるだけで、4つの要素はほぼ出せます。月に一度、同じ表で前の月と比べる習慣をつけるところから始めてください。
