回数券の管理方法:残り回数・有効期限・前受金の管理表と、トラブルを防ぐ決まり

回数券の管理は、お客様ごと・購入ごとに「購入日・回数・使った回数・残り・有効期限・1回あたりの単価・前受金の残高」を1行で記録すると、残り回数の食い違いや期限切れのトラブルを防ぎやすくなります。あわせて、有効期限と払い戻しの決まりを販売の前に書面で示しておくことが大切です。エステの回数券は、期間と金額によって特定商取引法の「特定継続的役務提供」に当たり、書面の交付や中途解約のルールが決められています。この記事では、整骨院・整体・エステなどで使える回数券の管理表、有効期限と払い戻しの決め方、エステの法律の確認点、会計の注意点を順に説明します。
回数券の管理で記録する7つの項目
回数券の管理で困りやすいのは、「残りが何回か」「いつまで使えるか」「まだ施術していない分のお金がいくらあるか」の3つです。この3つに答えられるよう、次の項目を記録します。
| 項目 | 記録する内容 | 何に使うか |
|---|---|---|
| 購入日 | 回数券を買った日 | 有効期限の起点、販売の記録 |
| 券の種類と回数 | メニュー名と総回数(例:全身 10 回) | 使える施術の確認 |
| 使った回数 | 来店ごとに1つずつ増やす | 残り回数の計算 |
| 残り回数 | 総回数 − 使った回数 | お客様への案内 |
| 有効期限 | 購入日から何か月後か、日付で書く | 期限前の案内、期限切れの扱い |
| 1回あたりの単価 | 販売価格 ÷ 総回数 | 前受金の残高、払い戻しの計算 |
| 前受金の残高 | 残り回数 × 1回あたりの単価 | まだ施術していない分のお金の把握 |
記録は「お客様ごと」ではなく「購入ごと」に1行にしてください。同じお客様が2冊目を買ったときに1行にまとめると、どちらの期限で何回残っているのかがわからなくなります。使った日の記録も残しておくと、お客様から「まだ残っているはず」と言われたときに、来店日と照らし合わせて説明できます。
回数券の管理表の例と計算のしかた
次の表は、管理表の記入例です。金額や回数は説明のための例で、相場や推奨の価格ではありません。
| お客様 | 購入日 | 券の種類 | 価格 | 総回数 | 使った回数 | 残り | 有効期限 | 1回の単価 | 前受金の残高 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Aさま | 2026-07-05 | 整体 60 分 | 40,000 円 | 8 | 5 | 3 | 2027-01-04 | 5,000 円 | 15,000 円 |
| Bさま | 2026-08-20 | フェイシャル | 45,000 円 | 6 | 2 | 4 | 2026-11-19 | 7,500 円 | 30,000 円 |
| Cさま | 2026-09-10 | 全身 | 60,000 円 | 12 | 0 | 12 | 2027-09-09 | 5,000 円 | 60,000 円 |
表のAさまの行を例に、前受金の残高の出し方を次の図にしました。

1回あたりの単価は、通常の料金ではなく、回数券の販売価格を総回数で割った値にします。割引のある回数券では、通常の料金で残高を出すと、実際に受け取ったお金より大きくなってしまうためです。割り切れない場合は、端数をどの回で調整するかを先に決めておきます。たとえば最後の1回で残りをまとめる、という決め方です。
管理表は、月に1回、次の3つを見ると役に立ちます。
- 有効期限が翌月までに来る行(残りがあるお客様へ、来店の案内をする)
- 前受金の残高の合計(まだ施術していない分として、使えるお金と分けて考える)
- 最後の来店から日が空いている行(残りがあるのに来ていないお客様を見つける)
前受金の残高は、店にとっては「これから施術で返す約束」の金額です。売上と同じように使ってしまうと、払い戻しの申し出が重なったときに困ります。売上の数字の見方は、売上管理の始め方でも説明しています。前受金を含めて、経営の数字を毎月どう見るかは美容室経営・サロン経営の基本にまとめています。
有効期限と払い戻しの決まりの決め方
回数券のトラブルで多いのは、使い切れなくなったときの扱いです。岡山市消費生活センターは、整骨院で20回分の回数券を買い、引っ越しで通えなくなったのに、規定を理由に払い戻しを断られた相談の事例を紹介しています。同じページでは、回数券の利用方法や払い戻しは事業者が定めた約款などに従うことになるため、購入前に確認するよう消費者に呼びかけています。店が決まりを決め、買う前に伝えておくことが前提だといえるでしょう。
決まりを決めるときは、次の項目を書面にしておきます。
| 決めること | 決め方の考え方 |
|---|---|
| 有効期限 | 通う間隔と回数から、無理なく使い切れる長さにする。期限の起点(購入日か初回の来店日か)も書く |
| 期限切れの扱い | 期限を過ぎた分をどう扱うか。延長を受けるならその条件 |
| 途中でやめるとき | 払い戻しをするか。するなら、使った回数をどの単価で差し引くか |
| 体調や引っ越しで通えないとき | 延長や払い戻しなど、例外の扱い |
| ほかの人への譲渡 | 家族などが使えるか |
| 対象のメニュー | 回数券で受けられる施術と、追加料金がかかるもの |
払い戻しで「使った回数を通常の料金で差し引く」決め方をすると、割引分を取り戻す形になり、お客様が納得しにくくなることがあります。どの単価で差し引くかを、販売の前に示しておくことが大切です。エステの回数券は、次の章のとおり、中途解約のときに店が受け取れる額に法律の上限があります。整骨院・整体の回数券についても、払い戻しの決まりが法律上問題ないかは、消費生活センターや弁護士などの専門家に確認してください。
キャンセル料の決め方は、サロンの無断キャンセル対策で、消費者契約法の考え方とあわせて説明しています。
エステの回数券と特定商取引法(特定継続的役務提供)
消費者庁の「特定商取引法ガイド」によると、エステティックは「特定継続的役務提供」の対象の1つです。期間が1か月を超え、金額が5万円を超える契約が対象になり、店頭での契約も含まれます。金額には、入会金や関連する商品の代金なども含めた契約金の総額で判断するとされています。回数券のように施術を受ける権利を販売する形も「特定権利販売」として対象に含まれる、と説明されています。
対象になる場合に、店が守る主なルールは次のとおりです(消費者庁の特定商取引法ガイドの概要より)。
| ルール | 内容の概要 |
|---|---|
| 書面の交付 | 契約の前に概要書面、契約の後に契約書面を渡す。役務の内容・対価・提供期間・クーリング・オフ・中途解約などを書く |
| 誇大広告などの禁止 | 事実と著しく違う表示や、著しく有利と誤認させる表示をしない |
| 禁止行為 | 勧誘のときや解約を妨げるために、事実と違うことを告げる、故意に事実を告げない、威迫して困惑させる |
| 書類の閲覧 | 前払いで5万円を超える場合、財務の書類を用意し、求めに応じて見せる |
| クーリング・オフ | 書面を受け取った日から8日以内は、消費者が契約を解除できる |
| 中途解約 | クーリング・オフの期間の後も解約できる。店が請求できる額に上限がある |
エステの中途解約で店が請求できる額の上限は、同じガイドで次のように示されています。
- 施術を始める前の解約:2万円
- 施術を始めた後の解約:提供した施術の対価に、「2万円」と「契約残額の10%」のいずれか低い額を足した額
上限を超える額をすでに受け取っている場合は、残りを返さなければならないとされています。回数券の「途中解約は返金なし」という決まりは、エステでこの対象に当たる契約では、そのまま使えない可能性が高いと考えられます。
整体・整骨院の施術は、指定された7つの役務の名前には挙がっていません。ただし、メニューの中身が痩身や美顔などに当たる場合の扱いは、施術の内容によって判断が分かれることも考えられます。自店の回数券が対象になるか、書面に何を書けばよいかは、詳しくは消費生活センターや弁護士などの専門家へ確認してください。
回数券の会計:前受金と売上の計上の時期
回数券の代金は、販売したときにまとめて受け取りますが、施術はその後の来店ごとに行います。そのため、受け取ったお金を「まだ施術していない分(前受金)」として扱い、使われた回ごとに売上に振り替える考え方があります。一方で、売上をいつ計上するかは、法人か個人事業主か、どの会計の基準を使っているかで扱いが変わることもあります。期限が切れて使われなかった分をいつ売上にするかも、確認が必要な点です。
自店の処理は、詳しくは顧問の税理士などの専門家に確認してください。どの処理をするにしても、管理表で「購入ごとの前受金の残高」と「使われた日と回数」を記録しておけば、必要な数字を出せます。
整骨院・接骨院・整体で回数券を扱うときの注意
この記事は、自費のメニューの回数券を前提にしています。健康保険などを使う施術の扱いや、その施術と回数券を組み合わせられるかは、この記事では扱いません。回数券の対象にするメニューは、案内の文と管理表の「券の種類」で明確に分けておきます。対象外の施術を回数券で受けられると誤解されないためです。
また、回数券を勧めるときは、「割安になる」点だけでなく、期限・払い戻し・通えなくなったときの扱いもあわせて伝えます。岡山市消費生活センターも、期間内に使い切れるかを購入前によく考えるよう呼びかけています。施術の回数や効果を約束するような言い方は避けてください。無理なく使い切れる回数と期限を一緒に考えるほうが、長く通ってもらいやすいはずです。
お客様が安心して買える回数券の決まり:販売前のチェックリスト
回数券を売り始める前、または決まりを見直すときに、次の点を確かめてください。
- 有効期限と、その起点(購入日か初回の来店日か)を書面に書いた
- 期限切れ・途中解約・通えなくなったときの扱いを書面に書いた
- 途中解約のとき、使った回数をどの単価で差し引くかを決めた
- 対象のメニューと、追加料金がかかる場合を書いた
- エステで1か月超・5万円超の契約になる場合、特定継続的役務提供の書面とクーリング・オフ・中途解約の扱いを確かめた
- 販売のときに、決まりを説明して同意をもらい、その記録を残す
- 購入ごとの管理表(または予約・会計のシステム)で残り回数と期限を記録する
- 来店のたびに、残り回数をお客様にも伝える
来店のたびに「残り○回、期限は○月○日です」と伝えると、お客様との食い違いが起きにくくなります。次回の予約の声かけのきっかけにもなるでしょう。声かけの例は次回予約率の計算と上げ方で紹介しています。
回数券の管理を紙・表計算・予約システムで行う場合
回数券の管理は、紙のノートや表計算ソフトでもできます。どの方法でも、来店のたびに必ず記録を更新してください。紙の券にスタンプを押すだけでは、券をなくしたときや、店の記録と券が合わないときに確かめる手段がありません。表計算ソフトで管理する場合は、上の管理表の列をそのまま使い、残り回数と前受金の残高を式で出すと計算の間違いを減らせます。
予約・会計と同じシステムで管理できると、来店の記録と回数券の使用が自動でつながります。経営改善型の予約管理システム Leporto では、分析の画面で、新規・既存ごとの売上や次回予約率などとあわせて、回数券メニューの購入率を見られます。回数券を予約とひもづけられ、コースごとに消化する回数を決めたり、1 枚の回数券で使えるコースを複数選べるようにしたりできます。月ごとに払うサブスク(分割払い)で購入してもらう形もとれます。残り回数や期限の管理をシステムで行いたい場合は、どこまでできるかを契約の前にデモで確かめてください。Leporto の回数券の扱いは回数券の機能ページで紹介しています。整体院で回数券と次回予約をあわせて運用する流れは、整体院向けの予約システムのページにまとめています。
Leporto では、管理画面で回数券のコースごとに所要時間と、1 回の来店で消化する回数を決めます(表示はデモデータ)。

お客様は、LINE から開くマイページで、回数券の残り回数と有効期限を確かめられます(表示はデモデータ)。

回数券を買ったお客様がその後も通い続けているかは、リピート率の計算と上げ方の考え方で確かめられます。
参考にした公的機関の資料
いずれも2026年10月18日に参照しました。
- 消費者庁 特定商取引法ガイド「特定継続的役務提供」 https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/continuousservices/
- 岡山市「「回数券」使えなくなるリスクも考えて!(令和5年7月号)」 https://www.city.okayama.jp/kurashi/0000051663.html
よくある質問
回数券の有効期限は何か月にすればよいですか?
決まった長さはありません。メニューの通う間隔と回数から、無理なく使い切れる長さにします。たとえば2週間に1回通う想定で10回なら、5か月より余裕を持たせると、体調や予定で来られない週があっても使い切りやすくなります。エステで期間が1か月を超え、金額が5万円を超える場合は、特定商取引法の対象になる点にも注意してください。
回数券の払い戻しを断ってもよいですか?
エステで特定継続的役務提供に当たる契約では、中途解約が認められ、店が請求できる額に上限があります(消費者庁の特定商取引法ガイド)。それ以外の業種でも、決まりの内容によっては問題になる場合が考えられます。詳しくは消費生活センターや弁護士などの専門家へ確認してください。
期限が切れた回数券の残りは、どう処理しますか?
お客様への扱い(延長を受けるか)と、会計上の扱い(いつ売上にするか)を分けて考えます。お客様への扱いは販売前に書面で示した決まりに従い、会計上の扱いは顧問の税理士に確認してください。
整骨院で回数券を販売しても問題ありませんか?
この記事では、自費のメニューの回数券を前提にしています。健康保険などを使う施術との関係は扱っていないため、所属する団体や専門家に確認してください。
整骨院の回数券の相場はどのくらいですか?
この記事では、相場の金額は示していません。地域や施術の時間、内容によって1回の料金が違うため、他店の価格をそのまま当てはめても、自店に合うとは限らないためです。価格は、自店の通常の1回の料金と回数をもとに、どこまで割り引くかで決めるのが考えやすい方法です。そのとき、回数券の販売価格を総回数で割った1回の単価が、材料費や人件費をまかなえるかを確かめてください。割引を大きくすると買ってもらいやすくなる一方で、使われるまで前受金の残高として抱える金額も増えます。期限と払い戻しの決まりとあわせて決めると安心です。
整骨院の回数券は医療費控除の対象になりますか?
医療費控除の対象になるかどうかは税金の制度の判断になるため、この記事では扱っていません。お客様から聞かれた場合は、店から「対象になります」と言い切らず、国税庁のホームページや税務署、税理士に確かめていただくよう案内してください。店としてできるのは、領収書に施術の日付と内容、金額がわかるように書いておくことです。お客様が確かめるときの手がかりになります。回数券の扱いをどう案内するかを決めたい場合も、詳しくは税理士などの専門家に相談してください。
回数券を販売するとき、お客様に何を渡せばよいですか?
最低限、券の種類と回数、価格、有効期限、期限切れ・途中解約・通えなくなったときの扱いを書いた書面を渡し、控えを店にも残しておくと安心です。エステで特定継続的役務提供に当たる契約では、概要書面と契約書面に書く項目が法律で決められています(消費者庁の特定商取引法ガイド)。書面の作り方は、詳しくは専門家へ確認してください。
