美容室・サロンの値上げの進め方:告知の時期、値上げのお知らせ例文、客離れを抑える準備

美容室・サロンの値上げは、決める→告知→実施→確認の順に進めます。客離れ(失客)を抑える要は、告知を主なお客様の来店周期の1回分より前に始めることです。そうすれば、多くの常連客に来店時に直接伝えられます。お知らせは店内掲示・LINE・Web予約ページ・スタッフの口頭で同じ内容を伝え、料金は税込で示すのが基本です。実施後は、客数・リピート率・客単価・次回予約率を値上げの前と比べて確かめます。この記事では、時期の表、そのまま使える値上げのお知らせ例文、客離れを抑える据え置き期間とメニューの見直しの比べ方、前後で見る数字を順に説明します。
値上げの前に決めておく6つのこと
告知の文面を書く前に、次の6つを決めておきます。ここが決まっていないと、掲示とLINEで内容がずれたり、スタッフごとに説明が変わったりします。
| 決めること | 決め方の例 | 決めないと起きること |
|---|---|---|
| 対象のメニュー | 全メニューか、カラー・パーマなど一部か | 「全部上がるのか」という問い合わせが増える |
| 新しい料金(税込) | メニューごとに旧料金と新料金を並べた表を作る | 掲示・予約ページ・レジの金額が食い違う |
| 実施日 | 「〇月〇日のご来店分から」と来店日で区切る | 予約した日と来店した日のどちらで決まるか分からない |
| すでに入っている予約の扱い | 実施日より前に予約した分も新料金か、旧料金か | 当日の会計で説明が必要になり、不満が出やすい |
| 据え置き・経過措置の有無 | 既存のお客様は〇月まで旧料金、など | 例外の範囲がスタッフごとに変わる |
| 値上げの理由 | 材料費、人件費、設備など、店の事情を1〜2文で | 口頭の説明がばらばらになる |
値上げの幅を決めるための計算
値上げの幅は、まず上がった費用から考えます。たとえば材料費が月に〇円増えた場合は、その額を対象メニューの月の施術件数で割ると、1回あたりに必要な上げ幅の目安になります。
次に、客数が減ったときの影響を計算しておきます。値上げ後も売上を同じに保てる客数は「今の売上÷新しい客単価」で出せます。計算の例として、客単価6,000円の店が6,500円に上げる場合は、6,000÷6,500で約92%です。つまり、客数の減りが約8%までなら、売上は値上げ前を下回りません。材料費は客数に応じて動くため、利益で比べる場合は、材料費を引いた額で同じ計算をします。
この数字は、値上げ後の客数がどうなるかを予想するものではありません。「どこまで減ったら見直すか」という線を、実施前に決めておくために使います。売上を客数と客単価に分けて記録する方法は、売上管理の始め方で説明しています。値上げの判断に使う費用の側の数字も含めた全体像は、美容室経営・サロン経営の基本にまとめています。
告知の時期:来店周期から逆算する
何日前に告知しなければならないという決まりは、今回の調査では公的な資料で確かめられませんでした。一般向けの解説記事には、店舗のような一般のお客様向けの商売では30〜60日前を目安とするものがあります。
サロンでは、日数を一律に決めるより、主なお客様の来店周期から逆算するのが実務的です。告知の期間を来店周期の1回分より長くとれば、周期どおりに来る常連客の多くに、実施前の来店で直接伝えられます。たとえばカラーのお客様が2か月ごとに来る店なら、実施日の2か月以上前に告知を始めます。周期が分からない場合は、リピート率の計算で使う来店の記録から、前回と今回の来店の間隔を出しておくと便利です。
| 時期 | すること | 使う場所 |
|---|---|---|
| 告知の開始の2〜4週間前 | 対象・新料金・実施日・据え置きの範囲・理由を決め、スタッフに共有する | 料金表の原案、スタッフ向けの説明メモ |
| 実施日の「来店周期1回分」以上前 | 告知を始める。同じ日に掲示・Web・LINEを出す | 店内掲示、Web予約ページ、ホームページ、LINE |
| 告知の期間中 | 来店したお客様に施術中か会計時に口頭で伝える | 店頭での会話 |
| 実施日の2週間前 | まだ来ていないお客様に、もう一度LINEで知らせる | LINE |
| 実施日 | 料金表、Web予約ページ、レジのメニューの金額を切り替える | 店内、予約の画面、レジ |
| 実施後1か月と3か月 | 客数・リピート率・客単価・次回予約率を前と比べる | 売上と顧客の記録 |
表の流れを4つの段階にまとめると、次の図のようになります。

時期を決めるときは、繁忙期の直前を避けると、来店が集中する時期に説明の時間をとられずに済みます。年末や卒業・入学の時期など、店の予約が混む月を確かめておきます。
新しい料金は税込で表示する(総額表示)
財務省の説明では、消費者に商品やサービスを売る課税事業者が価格を表示する場合、消費税を含めた支払総額の表示が義務づけられています(総額表示)。対象は表示の媒体を問わず、店内表示、チラシ、ダイレクトメール、ホームページ、電子メールなどの広告が例に挙がっています。たとえば税抜9,800円なら、消費税10%を含めた10,780円を表示します。
値上げのお知らせでは、旧料金と新料金を並べることが多いはずです。そのときは両方を税込にそろえると、お客様が実際に払う差額がすぐに分かります。なお、免税事業者は総額表示の義務の対象ではありませんが、仕入れで負担した消費税を含めた支払額を示すのが適正な表示とされています。LINEで送る料金の案内がどの扱いになるかなど、細かい判断に迷う場合は、税務署や税理士などの専門家に確かめてください。
値上げのお知らせ例文(掲示・LINE・予約ページ・口頭)
例文の〇の部分は店の内容に置き換えてください。どの例文も、対象・新料金(税込)・実施日・理由・問い合わせ先の5つを入れています。掲示とLINEとWebで、同じ金額と日付になっているかを最後に確かめます。
店内掲示(受付・セット面)
料金改定のお知らせ
いつも〇〇(店名)をご利用いただき、ありがとうございます。〇年〇月〇日のご来店分より、一部メニューの料金を改定いたします。
カット 〇,〇〇〇円 → 〇,〇〇〇円カラー 〇,〇〇〇円 → 〇,〇〇〇円(いずれも税込)
薬剤や材料の仕入れ価格が上がり、現在の料金を続けることが難しくなりました。これまでと同じ薬剤と施術の時間を保つための判断です。〇月〇日までにご来店の方は、現在の料金でご案内します。ご不明な点は、スタッフにお気軽にお尋ねください。
LINE(既存のお客様向け)
〇〇(店名)です。いつもありがとうございます。〇年〇月〇日のご来店分から、カラーなど一部メニューの料金を改定いたします。
・カラー 〇,〇〇〇円 → 〇,〇〇〇円(税込)・カット 〇,〇〇〇円 → 〇,〇〇〇円(税込)
材料の仕入れ価格の上昇が理由です。〇月〇日までのご来店は、現在の料金のままです。新しい料金表はこちら:〇〇(URL)ご質問はこのトークでも受け付けています。
すでに次回の予約が入っているお客様には、扱いを1文で添えます。例:「〇月〇日にご予約のお客様は、現在の料金でご案内します。」 LINEの一斉配信の頻度や、相手を絞った配信の考え方は、サロンのLINE配信 例文にまとめました。
Web予約ページ・ホームページの告知
【〇年〇月〇日より】料金改定のお知らせ
〇年〇月〇日のご来店分より、下記のメニューの料金を改定いたします。表示の料金はすべて税込です。
メニュー 〇月〇日まで 〇月〇日から カット 〇,〇〇〇円 〇,〇〇〇円 カラー 〇,〇〇〇円 〇,〇〇〇円 〇月〇日までにご来店の方は、ご予約の日にかかわらず現在の料金です。新規のお客様も同じ料金です。
予約ページでは、メニューの金額そのものを実施日に切り替えます。告知の文だけを載せて金額を変え忘れると、予約時と会計時の金額が違ってしまいます。
スタッフが来店時に伝える言い方
施術中の落ち着いた時間か、会計の前に伝えます。会計の最中に初めて聞くと、お客様は断る余地がないように感じやすいためです。
「〇〇さん、先にお伝えしておきたいことがあります。〇月〇日のご来店から、カラーの料金が〇,〇〇〇円から〇,〇〇〇円に変わります。薬剤の仕入れ値が上がっていて、今の薬剤を使い続けるための改定です。〇月〇日までにお越しいただければ、今の料金のままです。」
理由を聞かれたら、掲示と同じ理由を短く答えます。「高い」と言われたときは、言い返さずに受け止めます。そのうえで、周期を少し空けるメニューの組み方など、お客様の負担に合わせた提案をするとよいでしょう。次の来店日を決めるときの声かけは、次回予約率の計算と取り方の例文が参考になります。
美容室の値上げで客離れ(失客)を抑える方法
値上げによる客離れを、まったく起こさない方法はありません。ただ、この記事でここまでに説明した準備を合わせると、常連客が離れる理由を減らせます。要点は次の5つです。
- 告知を、主なお客様の来店周期の1回分より前に始める(告知の時期の章)
- 掲示やLINEだけにせず、来店したお客様には施術中か会計の前に口頭で伝える(例文の章)
- 理由を1〜2文で具体的に書き、掲示・LINE・口頭でそろえる
- 費用が上がったメニューに絞る、据え置き期間を設けるなど、進め方を選ぶ(下の表)
- 「どこまで客数が減ったら見直すか」の線を実施前に決め、実施後に数字で確かめる(値上げの幅を決めるための計算の節と、前後で確かめる数字の章)
値上げのしかたは一つではありません。主な選び方を比べると、次のようになります。
| 進め方 | 内容 | よい点 | 気をつけること |
|---|---|---|---|
| 全メニュー一律 | すべての料金を同じ幅か率で上げる | 説明が簡単 | 費用が上がっていないメニューまで上がる |
| 一部のメニューだけ | 材料費が上がったカラーなどに絞る | 理由とメニューが結びつき、説明しやすい | 対象を掲示で明確にしないと混乱する |
| 既存客の据え置き期間 | 既存のお客様は〇か月だけ旧料金 | 常連客が準備する時間をとれる | 期間中は売上が増えない。終了日を必ず決めて伝える |
| メニューの見直し | 施術の内容を分けて料金を付け直す、新しいメニューを作る | 選ぶ余地をお客様に残せる | 内容を減らして料金を据え置く場合も、変わった点を明記する |
据え置き期間を設ける場合は、期間を来店周期の1〜2回分にすると、常連客が少なくとも1回は旧料金で来店できます。終わりの日を決めずに始めると、いつまでも新料金に移れません。
どの進め方でも、内容を減らして気づかれないようにする方法は避けます。変わる点は、料金も内容もお知らせに書いておきます。
民間の調査では、未知株式会社と株式会社美通販が2026年6月に公表した美容室の利用者300名へのインターネット調査があります。この調査で、最も納得しやすい値上げの理由として最も多かったのは「薬剤や材料の価格が上がっている」で51.7%でした。また、株式会社LiIBeが2026年4月に美容室の経営層330名に行ったインターネット調査では、過去1年に施術メニューを値上げした層のうち、値上げ後の客数が「変化はない」は64.9%、「やや減少した」は23.4%、「大幅に減少した」は5.4%でした。どちらも回答者の範囲が限られた調査で、自店の結果を示すものではありません。理由を具体的に書くこと、客数の変化を自店の記録で確かめることの参考として扱ってください。
値上げの前後で確かめる数字
値上げがうまくいったかは、売上の合計だけでは分かりません。客数が減っても客単価が上がれば、売上は変わらないことがあるためです。次の数字を、値上げ前の同じ長さの期間と比べます。季節の影響を避けるには、前年の同じ月とも比べます。
| 数字 | 比べ方 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 客数(新規・既存を分ける) | 実施前3か月と実施後3か月 | 減っているのは既存か新規か |
| 既存客のリピート率 | 実施前後に来店した既存客が、周期内に再来したか | 常連客が離れていないか |
| 客単価 | 実施前後の平均 | 値上げの幅どおりに上がっているか |
| 次回予約率 | 実施前後の会計時の予約の割合 | 次の予約を見送る人が増えていないか |
| 売上・材料費を引いた額 | 実施前後の月の合計 | 計算した「見直す線」を下回っていないか |
据え置き期間を設けた場合は、期間が終わってから1〜2か月の数字で判断します。期間中は既存のお客様の料金が変わらないため、差が出にくいからです。リピート率の数え方は告知の時期の節で紹介した記事、客単価の分け方は美容室の客単価の上げ方で説明しています。
実施後に確かめることをチェックリストにまとめます。
- ☐ 掲示・Web予約ページ・ホームページ・レジのメニューの金額がすべて新料金(税込)になっている
- ☐ 据え置きの対象のお客様の会計が、旧料金で処理されている
- ☐ 実施後1か月の既存客の客数と次回予約率を、実施前と比べた
- ☐ 実施後3か月のリピート率と客単価を、実施前と前年の同じ月と比べた
- ☐ 値上げの月を、売上の記録のメモ欄に書いた
- ☐ 前に決めた「見直す線」を下回っていないか確かめた
Leporto でできること
Leporto は、経営改善型の予約管理システムです。LINE配信では、来店の周期などで相手を絞って送れます。たとえば実施日までに来店の予定がなさそうなお客様だけに、2回目のお知らせを送るといった使い方ができます。分析では、新規・既存・全体ごとの顧客数、売上、次回予約率、平均客単価を見られるため、値上げの前後の比較に使える画面です。配信の機能の詳細はLINE配信の機能ページをご覧ください。
参考にした公的機関の資料
いずれも2026年10月18日に参照しました。
- 財務省「消費税における『総額表示方式』の概要」 https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/sougakuhyoji_gaiyou.htm
よくある質問
値上げは何日前に告知すればよいですか
日数を一律に定めた決まりは、公的な資料で確かめられませんでした。サロンでは、主なお客様の来店周期の1回分より前に告知を始めると、常連客の多くに来店時に直接伝えられます。2か月ごとに来るお客様が多い店なら、2か月以上前が目安です。
常連のお客様だけ旧料金にしてもよいですか
据え置き期間として設ける方法があります。その場合は、対象の条件(たとえば実施日の前〇か月に来店した方)と終了日を決め、掲示とLINEに書いておきましょう。条件があいまいだと、スタッフによって扱いが変わり、不公平に感じられるおそれがあります。
値上げの理由はどこまで書けばよいですか
材料費、人件費、設備など、店の事情を1〜2文で書けば十分です。数字を細かく並べるより、何のための改定か(今の薬剤を使い続けるため、など)を書くほうが伝わります。掲示・LINE・口頭で同じ理由にそろえます。
値上げをすると、どのくらい客離れが起きますか
店ごとに違うため、一律には言えません。参考として、株式会社LiIBeが2026年4月に美容室の経営層330名に行ったインターネット調査では、過去1年に値上げした層のうち、値上げ後の客数が「変化はない」は64.9%、「やや減少した」は23.4%、「大幅に減少した」は5.4%でした。自店では、売上を保てる客数の割合を実施前に計算し、実施後の客数と比べて判断してください。
「値上げ」と「料金改定」はどちらの言葉を使えばよいですか
お知らせの見出しは「料金改定のお知らせ」とする例が多く見られます。ただし、本文では新旧の料金を並べ、上がることがはっきり分かるように書きます。言い換えで上がったことが伝わらないと、会計のときの不信感につながりかねません。
