サロンの売上分析のやり方:7つの切り口と集計表

机を真上から見た様子。区画に分けた大きな用紙に色の違う付箋を区画ごとに貼り分け、横に電卓と定規が置かれている

サロンの売上分析は、売上の合計を「客数×客単価」に分けたうえで、どこで差が出ているかを切り口ごとに探す作業です。美容室などの予約制の店では、期間・前年同月・新規と既存・スタッフ・メニュー・時間帯・来店のきっかけの7つで分けると、原因がほぼ見つかります。この記事では、売上分析のやり方を、切り口ごとの集計表(仮の数字)、損益分岐点の出し方、結果を打ち手に変える方法、毎月の確認リストの順に説明します。

サロンの売上分析と売上管理の違い

売上管理は、毎月の売上や客数を同じ定義で記録し、前の月や目標と比べる作業です。売上分析は、その記録を切り口ごとに分けて「なぜ増えたか、なぜ減ったか」を探し、次の手を決める作業です。記録がそろっていないと分析はできないため、先に売上管理の表があることが前提になります。

毎月の表の作り方と、最初に見る5つの数字は売上管理の始め方:毎月見る5つの数字と表の作り方で説明しています。ここでは、その5つの数字が動いたときに、どの切り口で掘り下げればよいかを扱います。予約・会計・カルテ・分析をどの順番で仕組みにするかはサロン・店舗のDXは何から始めるかで整理しています。売上と費用を合わせた経営の数字の全体像は美容室経営・サロン経営の基本にまとめています。

一般の企業向けの解説では、地域別・取引先別・営業担当者別といった切り口や、RFM分析・クロス集計などの手法がよく紹介されます。サロンでは、お客様が個人で、売っているのは主に施術の時間です。そのため、「初めての人か、2回目以降の人か」「誰が担当したか」「どの時間に予約が入っているか」で分けるほうが、店の打ち手につながります。

売上分析の進め方(4つの手順)

分析は、次の4つの手順で進めます。いきなり細かく分けると、数字の多さに迷って結論が出ないためです。

  1. 問いを1つ決める。「9月の売上が前年より減ったのはなぜか」のように、答えを出したい問いを1文で書きます。
  2. 売上を客数と客単価に分ける。どちらが動いたかで、次に見る切り口が変わります。客数が減ったなら新規と既存、客単価が下がったならメニューとスタッフを先に見ます。
  3. 切り口で分けて、差が大きいところを探す。下の7つの切り口のうち2〜3個で十分です。差が大きい組み合わせが、原因の候補になります。
  4. 打ち手を1つ決め、翌月に同じ表で確かめる。手を打った内容をメモに残し、翌月以降の同じ数字で効果を見ます。

次の図は、4つの手順の流れをまとめたものです。

売上分析の4つの手順の図。1 問いを1つ決める(例:9月の売上が前年より減ったのはなぜか)、2 売上を客数と客単価に分ける、3 切り口で分けて差が大きいところを探す(7つの切り口のうち2〜3個で十分)、4 打ち手を1つ決め、翌月以降に同じ表の数字で効果を確かめる。

数字の定義(税込か税抜か、店販を含めるか、新規の数え方)は、分析のたびに変えないことが大切です。定義が変わると、数字の差が店の変化なのか数え方の違いなのか分からなくなります。

売上分析の7つの切り口と集計表

ここからの表の数字は、計算と読み方の流れを示すために作った仮の数字です。実在の店舗の実績ではなく、良し悪しの目安を示すものでもありません。

1. 期間で見る(月・曜日・1日あたり)

まず月ごとの売上を並べ、増減の流れを見ます。そのうえで、営業日数の違いを除くために「1日あたりの売上」も出します。祝日や休業で営業日数が1〜2日違うだけで、月の売上は大きく動くためです。曜日ごとの売上も並べると、土日に偏っているか、平日にも予約が入っているかが分かります。

2. 前年同月と比べる

サロンの売上には季節による増減があることが多いため、前の月より前年の同じ月と比べるほうが、店の実力の変化を読み取りやすくなります。

項目前年9月今年9月差
売上(税抜)1,380,000円1,326,000円−54,000円
延べ客数200人195人−5人
客単価6,900円6,800円−100円
営業日数25日24日−1日
1日あたりの売上55,200円55,250円+50円

売上は54,000円減っています。客数の差(−5人×前年の客単価6,900円=−34,500円)と、客単価の差(−100円×今年の客数195人=−19,500円)を足すと、売上の差の54,000円と一致します。

ただし、1日あたりの売上はほぼ同じです。この例では、売上が減った主な理由は営業日が1日少なかったことで、店の集客や単価が大きく崩れたわけではないと読めます。前年同月比だけで判断せず、営業日数をそろえて見ることで、余計な手を打たずに済みます。

3. 新規と既存に分ける

客数が減ったときは、初めて来た人(新規)と2回目以降の人(既存)に分けます。新規は主に集客の結果、既存は主に接客や次回の提案の結果を表すため、分けないと原因の場所が分かりません。

区分客数客単価売上売上の割合
新規30人5,800円174,000円12.4%
既存170人7,200円1,224,000円87.6%
合計200人6,990円1,398,000円100%

この例では、初回の割引がある新規の客単価が、既存より1,400円低くなっています。新規の割合が増えた月は、全体の客単価が下がって見えることがあります。客単価の低下が「既存のお客様のメニューが変わったため」か「新規が増えたため」かは、この表で切り分けられます。原因が分かったあとの打ち手は、美容室の客単価の上げ方にまとめています。

新規のお客様が2回目に来たかどうかは、売上の表だけでは分かりません。新規客のうち決めた日数以内に再来した人の割合(新規の再来率)を、別に数えておきます。数え方はリピート率の計算方法と上げ方で説明しています。

4. スタッフ別に見る

スタッフが2人以上いる店では、担当スタッフごとに分けます。売上の大きさだけで比べると、出勤時間の長い人や、指名客の多い人が有利になります。そこで、客単価・新規の再来率・次回予約率・稼働率を並べて、売上の差がどこから来ているかを見ます。

スタッフ売上延べ客数客単価新規の担当次回予約率稼働率
A620,000円80人7,750円8人55%85%
B448,000円70人6,400円12人40%75%
C261,000円45人5,800円10人30%55%

この例のCさんは、売上が少ない一方で、稼働率が低く、予約の空いている時間が多いと読めます。新規の担当は多いため、初回の接客と次回の提案の流れを見直すと、再来の客数が増える余地があります。スタッフ別の表を、誰にどんな支援が要るかを決める材料として使えば、スタッフの協力も得やすいでしょう。スタッフ別の売上を給与の計算に使う場合は、美容室の歩合制の計算方法をご覧ください。

次回予約率の数え方と声かけの例は次回予約率の計算方法と取り方、稼働率の分母と分子の決め方はサロンの稼働率の計算で説明しています。

5. メニュー別に見る(ABC分析)

客単価が下がったときは、メニューごとの売上を見ます。ABC分析は、売上の大きい順に並べて累計の割合を出し、上位からA・B・Cの3つに分ける方法です。区切りの割合に決まりはありませんが、累計で70%までをA、90%までをB、残りをCとする例がよく使われます。

順位メニュー売上割合累計の割合区分
1カット+カラー520,000円40.6%40.6%A
2カラー(単品)310,000円24.2%64.8%A
3カット(単品)230,000円18.0%82.8%B
4パーマ120,000円9.4%92.2%C
5トリートメント(単品)60,000円4.7%96.9%C
6ヘッドスパ40,000円3.1%100%C

Aのメニューは、売上の柱です。前年より件数が減っていないか、価格の見直しが必要かを先に確かめます。Cのメニューは、すぐに外すのではなく、Aのメニューに追加で提案しやすいかどうかで判断します。単品の売上は小さくても、組み合わせると客単価を上げる役割を持つことがあるためです。

店販の商品も同じ方法で分けられます。店販は、施術と分けて「技術売上」と「店販売上」として記録しておくと、客単価の変化がどちらから来ているかを見分けられます。

6. 時間帯別に見る

予約制の店の売上は、施術できる時間の長さで上限が決まります。曜日と時間帯で予約の埋まり方を並べると、売上を増やせる時間がどこに残っているかが分かります。

時間帯平日土日祝
10時〜13時55%90%
13時〜16時70%95%
16時〜19時85%92%

表の数字は、出勤している時間のうち施術に使った時間の割合(稼働率)です。この例では、土日はほぼ埋まっており、客数を増やす余地は平日の午前に残っています。土日の売上を増やしたい場合は、客数ではなく、メニューの組み合わせなどで客単価を上げる方向を考えます。

7. 来店のきっかけ別に見る

新規客数が減ったときは、予約サイト・Googleマップ・SNS・紹介などの来店のきっかけで分けます。人数だけでなく、新規の再来率と初回の客単価も並べると、「人数は多いが続かない経路」と「人数は少ないが続く経路」を見分けられます。

来店のきっかけ新規客数90日以内の再来率初回の客単価
予約サイト18人33%5,200円
Googleマップ6人50%6,500円
Instagram5人40%6,000円
紹介4人75%7,000円

注意したいのは、人数が少ない経路の割合です。紹介の4人のうち3人が再来すれば75%になりますが、1人違うだけで25ポイント動きます。数か月分をまとめてから比べると、偶然の差に振り回されにくくなります。きっかけの記録の仕方と媒体別の集計表はサロンの集客効果を測定する方法で説明しています。

損益分岐点を出す:いくら売れば赤字にならないか

売上分析で見つけた差が、利益にどう効くかを判断するには、損益分岐点を知っておくと便利です。損益分岐点売上高は、利益がちょうどゼロになる売上で、次の式で出します。

損益分岐点売上高=固定費÷(1−変動費率)

固定費は、売上にかかわらず毎月かかる費用です。家賃、固定の給与、リース料、システムの利用料などが入ります。変動費は、売上に応じて増える費用です。薬剤などの材料費、店販の仕入れ、歩合の給与、カードの決済手数料などが入ります。変動費率は、変動費を売上で割った値です。

項目仮の数字
固定費(月)900,000円
変動費率20%
損益分岐点売上高900,000円÷(1−0.2)=1,125,000円
客単価7,000円
必要な延べ客数(月)1,125,000円÷7,000円=約161人
営業日数24日
1日あたりに必要な客数161人÷24日=約6.7人

1日あたりの客数に直すと、スタッフの人数や予約の枠と比べやすくなります。たとえば、スタッフを1人増やして固定費が増える場合は、増えた分を式に入れ直し、必要な客数が予約の枠に収まるかを確かめます。

どの費用を固定費と変動費に分けるかは、店の給与の形や契約によって変わります。費用を固定費と変動費に分ける表と、利益率・原価率の出し方は美容室の利益率と原価率で紹介しています。会計や税務の扱いは、税理士に相談してください。

分析の結果を打ち手に変える

分析は、次の手を1つ決めるところまでやって終わりです。見つかった差と、確かめることと、打ち手の例を対応させておくと、毎月の見直しが短くなります。

分析で見つかったこと次に確かめること打ち手の例
1日あたりの売上は前年並みで、月の売上だけ減った営業日数、休業、祝日の並び手を打たず、翌月も同じ表で様子を見る
既存の客数が減ったいつもの来店周期を過ぎても来ていない人の一覧次回の予約の提案、来店の案内の送り方を見直す
新規の客単価が低く、全体の単価を下げている初回の割引の内容、2回目の来店の割合初回の割引と2回目の案内をセットで見直す
特定のスタッフの次回予約率が低い会計のときの提案の有無、担当した新規の人数声かけの手順を店で揃え、練習の時間を取る
Aのメニューの件数が減った予約サイトの掲載、価格の改定の時期掲載の写真や説明を見直す
平日の午前の稼働率が低いその時間に出勤している人数シフトの時間の見直し、平日向けのメニュー
ある来店のきっかけの再来率が低いその経路から来た人の初回のメニューと担当その経路の掲載内容と初回の流れを見直す

打ち手は、1か月に1つか2つに絞ります。一度にいくつも変えると、翌月に数字が動いても、どの手が効いたのか分からなくなるためです。予約の空いている時間とシフトの関係は、サロンのシフト管理も参考にしてください。

毎月の売上分析の確認リスト

月が明けたら、次の順に確かめます。慣れれば1時間ほどで終わる量にしておくと、続けやすくなります。

  • ☐ 前の月の売上・客数・客単価を、決めた定義で集計した
  • ☐ 前年同月と前月に比べ、営業日数の違いも確かめた
  • ☐ 売上の差を、客数の差と客単価の差に分けた
  • ☐ 客数を新規と既存に分け、どちらが動いたかを見た
  • ☐ 確定した月の新規の再来率を、対象の月の行に記入した
  • ☐ スタッフ別の客単価・次回予約率・稼働率を並べた
  • ☐ メニュー別の売上を並べ、Aのメニューの件数を前年と比べた
  • ☐ 曜日・時間帯ごとの予約の埋まり方を見た
  • ☐ 来店のきっかけごとの新規客数と再来率を見た(数か月分をまとめて)
  • ☐ 損益分岐点と比べ、売上が上回っているかを確かめた
  • ☐ 今月の打ち手を1〜2つ決め、メモの列に書いた
  • ☐ 前の月に打った手の結果を、同じ表で確かめた

すべてを毎月見る必要はありません。最初は上の4つから始め、表が続くようになってから切り口を足してください。

表計算ソフトで続けるか、システムで集計するか

上の7つの切り口は、来店ごとの記録(日付、お客様、新規か既存か、担当、メニュー、金額、来店のきっかけ)があれば、エクセルやGoogleスプレッドシートでも集計できます。費用をかけずに始められ、店の定義に合わせて表を変えられるのが利点です。

一方で、新規の再来率や来店周期は、一人ひとりの来店の履歴をさかのぼって数える必要があり、手作業では時間がかかります。稼働率も、予約の所要時間とシフトの出勤時間を突き合わせなければ出せません。入力の漏れや二重の登録があると、分析の結果も崩れます。

Leporto は、予約・顧客・カルテと売上や集客の分析をまとめた予約管理システムです。新規・既存ごとの売上・客数・次回予約率・平均客単価、技術売上と店販売上、実リピート率、スタッフ別の次回予約率、稼働率(実績と今後2か月の予測)、商品のABC分析を、予約と会計の記録から集計できます。予約と会計の記録がつながるのは、Leporto の POS(会計)を使う場合です。管理画面の「アナリティクス」では、来店のきっかけ別に新規客数と再来率を見られます。分析の画面で見られる数字は、売上・集客の分析の機能ページで紹介しています。

よくある質問

売上分析はどのくらいの頻度で行えばよいですか

月に1回、前の月の締めのあとに行う店が多いでしょう。新規の再来率のように確定までに数か月かかる数字や、人数の少ない来店のきっかけは、3か月や半年の単位でまとめて見ると、偶然の差に左右されにくくなります。

1人で営業しているサロンでも売上分析は必要ですか

スタッフ別の切り口は要りませんが、新規と既存、メニュー、時間帯、来店のきっかけの切り口は1人の店でも役立ちます。施術できる時間が限られる分、どの時間とどのメニューで売上が出ているかを知ると、予約の受け方を決めやすくなります。

ABC分析で区分がCになったメニューはやめるべきですか

すぐにやめる必要はありません。Cのメニューでも、Aのメニューと組み合わせて注文されているなら、客単価を支える役割を持っています。単品で予約される件数と、組み合わせで注文される件数を分けて確かめてから判断してください。

前年のデータがない場合はどう比べればよいですか

前の月と比べ、メモの列に季節の要因(年末、卒業や入学の時期など)を書き添えます。1年分の記録がたまれば、翌年から前年同月と比べられます。比べる相手がない最初の年は、分析より、同じ定義で記録を続けることが先です。

損益分岐点の固定費と変動費は、どう分ければよいですか

売上が増えても変わらない費用を固定費、売上に比例して増える費用を変動費とします。給与が固定給と歩合に分かれている場合は、固定給を固定費、歩合を変動費に入れます。分け方に迷う費用は、税理士に相談して決め、毎月同じ分け方を続けてください。