施術録の書き方:整骨院・接骨院が通知で確かめる記載事項と、あとから説明できる記録

施術所の机で記録用紙にペンで記入する手元と、背をそろえて棚に並ぶ記録ファイル

施術録の書き方の基本は、厚生労働省の通知が求める「記載・整備事項」をもれなく押さえ、患者ごとに1つの施術録にまとめて書くことです。そのうえで、医師の同意を得たとき、自費から保険の扱いに切り替えたとき、医療機関へ紹介したときなど、通知が個別に記載を求めている場面を落とさないようにします。経過と施術の内容は、あとから読んだ人にも分かる言葉で残します。

この記事では、通知の本文で確かめられる決まりを表にし、経過の書き方の型と点検表を添えます。様式の細部や保存の期間は、改正されることがあります。最新の通知と保険者の案内を確認し、判断に迷う点は所属の団体や専門家に相談してください。

施術録の役割と、通知が定める作り方

整骨院・接骨院で健康保険の対象になるのは、骨折、脱臼、打撲、捻挫(いわゆる肉ばなれを含む)の施術です。骨折と脱臼は、緊急の場合を除き、あらかじめ医師の同意が必要です。単なる肩こりや筋肉疲労への施術は保険の対象にならず、全額が自己負担になります(厚生労働省「柔道整復師等の施術にかかる療養費の取扱いについて」)。

柔道整復では、患者が自己負担分だけを窓口で払い、残りを柔道整復師が患者に代わって保険者へ請求する「受領委任」という方法が、例外的に認められています。患者に代わって請求するため、施術を受けるときに必要な書類へ患者のサインをもらいます(同ページ)。

施術録は、この療養費の請求の根拠になる記録です。通知「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準の実施上の留意事項等について」(平成9年4月17日 保険発第57号)の第六は、療養費の支給対象となる施術について、別添の記載・整備事項を網羅した施術録を患者ごとに作成しておくよう求めています。同じ患者は、初検ごとや負傷部位ごとに別の用紙に分けず、同じ施術録に記載するのが決まりです。施術の明細を書ききれない場合は、別紙に記載して施術録に添付します。

この記事で引用した通知の文言は、厚生労働省の法令等データベースに載っている本文です。本文の中には古い役所の名前も残っています。その後の改正で変わった部分がないかは、最新の通知や保険者の案内で確かめてください。

自費のカルテと施術録の違い

自費の施術のカルテやカウンセリングシートは、院が自分で項目を決める記録です。施術録は、療養費の施術について通知が記載事項を定めている記録です。目的と決まりの出どころが違うため、同じ用紙で兼ねようとせず、分けて考えます。

比べる点施術録(療養費の施術)自費の施術のカルテ
作る理由療養費の請求の土台。通知が作成を求めている施術の内容を引き継ぎ、次の提案に生かす
項目を決めるもの通知の別添「記載・整備事項」院の判断(用紙の例は カルテのテンプレート)
まとめ方患者ごとに1つ。初検や部位ごとに分けない院の決まりによる
確かめる先最新の通知、保険者、所属の団体院の決まり

初回に聞き取る内容(つらいところ、既往歴、服用中の薬など)は、カウンセリングシートの項目例で整体・接骨・鍼灸の欄を紹介しています。聞き取った内容のうち、施術録に書くべきものは施術録に記載します。

通知が施術録への記載・添付を求めている場面

通知の別添「記載・整備事項」のほかに、通知の本文には「施術録に記載しておくこと」「施術録に添付しておくこと」と書かれた場面がいくつかあります。普段はあまり起きない場面ほど書き漏れやすいため、表にして手元に置いておくと確かめやすくなります。

場面施術録にすること通知の箇所
骨折・脱臼の施術で医師の同意を得た医師から同意を得た旨を記載する。記載があれば、必ずしも同意書の添付を要しない第一の3
患者の希望で、後療に新しい包帯を使った患者から申出書を受け取り、患者から徴収した額を記載する(この包帯は療養費の支給対象外)第一の11
自費の施術の途中で、受領委任の扱いができるようになった摘要欄に「〇月〇日自費初検、〇月〇日健保被保険者資格取得」などと記載する(支給申請書の摘要欄にも)第二の5
保険の種別が変わった摘要欄に「〇月〇日初検、〇月〇日保険種別変更による健保被保険者資格取得」などと記載する(支給申請書の摘要欄にも)第二の5
施術部位が6部位目以上になった6部位目以降の負傷名も含めて記載する第五の4の(3)エ
応急施術のあと、施術情報提供紹介書で医療機関へ紹介した交付した紹介書の写しを添付する(請求のときは支給申請書にも写しを添付)第五の4の(7)イ
施術の明細を書ききれない別紙に記載して添付する第六の1

打撲・捻挫の施術が初検の日から3か月を超えて続く場合は、負傷部位、症状、施術の継続が必要な理由を明らかにした長期施術継続理由書を、支給申請書に添付します(第五の3の(1))。これは支給申請書の決まりです。とはいえ、理由書に書く症状や理由は、施術録の経過と食い違わないようにしておくべきでしょう。

別添の「記載・整備事項」に並ぶ具体的な項目は、この記事では引用していません。通知の本文を開き、自院の様式と1項目ずつ突き合わせてください。所属の団体が様式を配っている場合は、その様式と通知の両方を見比べると漏れに気づきやすくなります。

経過と施術内容の書き方:あとから読んで分かる記録にする

経過の欄は、施術録の中で院ごとの差が出やすいところです。ここで紹介するのは、通知の文言ではなく、記録を読みやすくするための編集部の提案です。院内で書き方をそろえるときの下書きとして使ってください。

1回の来院で残す内容の型

来院ごとに、部位ごとに、次の順で書くと、日付を追って読んだときに変化をたどれます。

欄書く内容書き方の例(空欄の型)
日付・部位来院日と、どの負傷部位の記録か〇月〇日 〇〇部の〇〇
本人の訴え患者が話した内容を、なるべく本人の言葉に近い形で「〇〇の動作で痛む」
所見施術者が確かめた状態(腫れ、動かせる範囲など)〇〇は前回より〇〇
行った施術その日に行った施術の内容〇〇を〇〇の目的で実施
方針・その他次回までの方針、指導した内容、出来事(同意・紹介・切り替えなど)次回〇〇を確認

書くときに院内で決めておくこと

まず、略語と記号は院内で一覧にしておきます。書いた本人には分かる略語も、ほかの施術者やあとから読む人には伝わりません。

次に、訂正のしかたを決めます。紙なら元の記載が読める形で線を引き、訂正した日と人が分かるようにしておくと、あとから記録の経緯を説明しやすくなります。電子の記録の場合は、訂正の履歴が残るかどうかが確認の要点です。

さらに、「いつ書くか」を決めます。施術の直後に書く決まりにしておくと、記憶に頼った書き足しを減らせます。忙しい時間帯は要点だけを書き、その日のうちに清書するといった運用でも構いません。

最後に、施術の効果を約束するような言葉は、記録にも院内の文書にも使わないようにします。施術録は、行ったことと確かめた状態を残すための記録です。

日々の運用:記入から点検までの流れ

記入の決まりを作っても、点検の手順がないと書き漏れは残ります。受付から月末までの流れを、院内の手順として決めておくと担当者が替わっても回ります。下の図は、この節で説明する4つの段階をまとめたものです。

施術録の記入から点検までの4つの段階の図。受付で保険の資格と負傷の内容を確かめて施術録に記載し、施術の直後に部位ごとの経過と行った施術を書き、同意・切り替え・紹介などの出来事があればその都度記載や添付をし、月末に施術録と支給申請書の内容を突き合わせて漏れを直す。

受付では保険の資格を確かめ、初めての負傷なら、負傷の日時や原因などを聞き取って記載します。施術の直後には、部位ごとに経過と行った施術を書きます。医師の同意、自費からの切り替え、保険の種別の変更、医療機関への紹介などがあった日は、その日のうちに記載や添付を済ませましょう。前の節の表が手がかりになります。月末には、施術録と支給申請書の内容(負傷名、部位、日付、摘要欄)を突き合わせ、食い違いや書き漏れを直します。

施術録の点検表

月末の点検や、新しいスタッフが入ったときの確認に使える点検表です。通知で確かめられる項目と、院内の決まりとしての項目を分けています。

区分確かめること済
通知患者ごとに1つの施術録になっていて、初検や部位ごとに分けていない□
通知別添の記載・整備事項と、自院の様式を突き合わせた□
通知医師の同意を得た場合、その旨を記載している□
通知自費からの切り替え、保険の種別の変更を摘要欄に記載している□
通知6部位目以降の負傷名も記載している□
通知施術情報提供紹介書の写しを添付している□
通知書ききれない明細を別紙にし、施術録に添付している□
院内来院ごとに、部位ごとの経過と行った施術を書いている□
院内略語の一覧があり、訂正の方法を決めている□
院内長期施術継続理由書の内容と、施術録の経過が食い違っていない□
院内施術録の保管場所と、見られる人を決めている□

保存と保管:期間は最新の通知で確かめる

施術録をいつまで保管するか、何を起点に数えるかは、通知や受領委任の取扱いの定めで確かめる事項です。この記事では、確かめた通知の本文の範囲に保存の期間の記載がなかったため、年数を書いていません。最新の通知、保険者の案内、所属の団体で確認してください。

施術録には、負傷や体の状態といった健康に関わる情報が書かれます。鍵のかかる場所に保管する、見られる人を決める、院の外に持ち出さないといった扱いを、院内の決まりにしておきます。

紙の施術録を電子化して保管したい場合も、まず要件を確かめます。施術録として認められる形で保管できるかは、使う仕組みや運用で変わるためです。紙の記録を電子化する手順は、紙カルテを電子化する手順で一般的な流れを紹介しています。ただし、施術録には別の決まりがあるため、そちらを優先してください。

予約・自費の記録と施術録は、道具を分けて管理する

整骨院・接骨院では、保険の施術と自費の施術を両方行うことがあります。記録の種類ごとに、何で管理するかを決めておくと、施術録に自費のメモが混ざったり、予約の情報が施術録の代わりに使われたりするのを防げます。自費の顧客情報やカルテに残す項目は「整体院・鍼灸院の顧客管理」、予約の仕組みの選び方は「整骨院・整体院の予約システムの選び方」で解説しています。

記録主な中身管理の道具の例
施術録(療養費の施術)通知の記載・整備事項、経過、施術の内容通知に沿った紙の様式、または施術録・療養費の請求に対応した専用のシステム
自費の施術のカルテ院が決めた項目、施術の内容、次回の提案院の用紙、電子カルテ
予約・顧客情報来院の日時、連絡先、来院の回数予約システム、顧客管理の仕組み
自費の会計・回数券メニュー、金額、残りの回数POS(会計)の仕組み、管理表(回数券の管理)

一般的な予約システムや電子カルテに「カルテ」の機能があっても、それが施術録の要件を満たすとは限りません。施術録と療養費の請求は、通知の決まりに沿った紙の様式か、それに対応した専用のシステムで扱うのが前提です。

Leporto は、予約、顧客情報、自費メニューの会計を扱う予約管理システムです。施術録の作成や療養費の請求の機能はありません。整骨院・接骨院で使う場合は、施術録と請求は専用の仕組みや紙で管理し、予約と自費の会計を Leporto で受け持つ、という分け方になります。

参考にした公的機関の資料

いずれも2026年10月18日に参照しました。

よくある質問

施術録は、初検のたびに新しく作り直すものですか

通知の第六は、同じ患者については、初検ごとや負傷部位ごとに別の用紙に分けず、同じ施術録に記載するよう定めています。書ききれない明細は、別紙に書いて添付します。

施術録の保存期間は何年ですか

この記事で確かめた通知の本文の範囲には、保存の期間の記載がありませんでした。保管の期間と起点は、最新の通知、受領委任の取扱いの定め、保険者の案内で確かめ、迷う場合は所属の団体に相談してください。

自費の施術だけの院でも、施術録は必要ですか

通知の第六は、療養費の支給対象となる柔道整復師の施術についての定めです。自費の施術の記録をどう残すかは院の判断になりますが、施術の内容を引き継ぐためにカルテを残しておくと役立ちます。保険と自費の両方を行う院は、記録を混ぜないよう分けて管理します。扱いに迷う場合は、所属の団体や専門家に確認してください。

鍼灸やマッサージの施術録も、同じ書き方でよいですか

この記事で取り上げた通知は、柔道整復の療養費についてのものです。はり・きゅうとマッサージは、保険を使うにはあらかじめ医師の同意書か診断書が必要とされるなど、取扱いが異なります(厚生労働省「柔道整復師等の施術にかかる療養費の取扱いについて」)。施術録の決まりも、それぞれの通知と保険者の案内で確かめてください。

電子カルテで施術録を作ってもよいですか

電子の記録で施術録を作れるかどうかは、要件を満たす形で記録・保管できるかによります。施術録や療養費の請求に対応した専用のシステムかどうかを提供元に確かめ、最新の通知や保険者の案内とあわせて判断してください。