指名料の決め方:3つの型と金額の考え方、予約ページでの表示と歩合との関係

受付で、色の違う3枚のカードと料金表のボード、電卓を前にした手元

指名料の決め方は、まず「全員同じ額にする(一律)」「スタッフのランクで分ける(ランク別)」「取らない」の3つの型から選び、次に金額を自店の予約の埋まり方から決めます。金額を決めたら、予約ページと店内の料金表で、税込の額と「指名なしなら指名料はかからない」ことを予約の前に分かるように示し、最後にスタッフの歩合へどう入れるかを決めます。「指名料の相場」については、公的な統計は見当たりません。この記事では、出典のある調査で分かることと、自店の数字で金額を決める手順を説明します。

指名料の意味と、店が指名料を取る理由

指名料は、お客様が予約のときに担当のスタッフを選んだ場合に、メニューの料金とは別にいただく料金です。担当を選ばない予約は「指名なし」や「フリー」と呼ばれ、空いているスタッフが担当します。

指名料を取る理由は、店によって違います。決める前に、自店がどの理由で取るのかを言葉にしておくと、金額と見せ方がぶれません。

取る理由考え方金額への表れ方
技術や経験への対価経験の長いスタッフほど価値が高いランクが上がるほど高くする
予約の集中をならす指名が一部のスタッフに集まり、枠が足りない埋まりやすいスタッフだけ高くする
担当を固定する手間への対価同じ人が続けて担当するよう、シフトや枠を調整する全員同じ額にする

反対に、指名料を取らない店もあります。「誰が担当しても同じ品質」を約束したい店や、もともと1人が担当を続ける形の店では、指名料を取る理由が弱くなるためです。

指名料の相場は?出典のある数字で分かること

指名料の金額について、国や業界団体がまとめた統計は見つかりませんでした(2026年10月18日時点)。ほかの会社の記事に「相場」として金額が載っていることはありますが、調べ方が書かれていない数字を、自店の金額の根拠にするのはおすすめしません。

一方で、お客様が指名をどう考えているかは、民間の調査で一部が分かります。

調査分かったこと
「スタイリスト指名についての意識調査」2024年3月、回答者1,008名(株式会社ファンくる(Fancrew Inc.)調べ)美容室でスタイリストを指名したことがある人は61%。指名する頻度は「必ず指名する」が48%、「指名することが多い」が25%
「美容師指名と次回予約についての意識調査」2023年3月、回答者991名(株式会社ファンくる(Fancrew Inc.)調べ)美容師を指名することが多い人は46%。指名をするときに最も重視する点は「仕上がり」
「美容室の“指名料”に関する印象調査」2020年3月発表、口コミサイト「ヘアログ」に投稿された指名料に触れた口コミ100件の分類(株式会社ノーマリズム)否定的な口コミが55%、肯定的な口コミが35%、その他が10%

ファンくるの調査はファンくるの会員へのインターネット調査、ノーマリズムの調査はヘアログの口コミを分けて数えたものです。どちらも美容室についての調査で、まつげサロンやパーソナルジムの数字ではありません。

ここから言えるのは、指名をしたいお客様は少なくない一方で、指名料そのものに抵抗を感じる声も多い、ということです。ノーマリズムの調査では、肯定的な口コミは「払った額以上の価値があった」と感じた場合に多く、否定的な口コミには「初めての来店で、知らないうちに指名料を取られていた」といった、事前に分からなかったことへの不満も含まれていました。金額の高い安いだけでなく、予約の前に分かるように見せることが、指名料の印象を左右すると考えられます。

指名料の決め方の3つの型と、向いている店

指名料の型は、大きく次の3つに分けられます。店のスタッフの構成と、指名の集まり方に合わせて選びます。

型仕組み向いている店気をつけること
一律指名したら、どのスタッフでも同じ額スタッフの経験に大きな差がない店。指名料の説明を短くしたい店指名が多いスタッフに予約が集まる流れは変わらない
ランク別スタイリスト・トップスタイリストなど、ランクごとに額を変える経験の差が大きい店。育成中のスタッフに指名を回したい店ランクの基準をお客様とスタッフに説明できるようにしておく
取らない指名しても料金は同じ1人で担当を続ける形の店。誰が担当しても同じ品質を約束したい店指名の多いスタッフの枠が埋まり、新規のお客様が入りにくくなることがある

業種によっても考え方が変わります。美容室はスタッフの人数が多く、経験の差もはっきりしているため、ランク別の型と相性のよい業種です。まつげサロンでは、同じアイリストが続けて担当するとデザインを合わせやすく、指名の価値を伝えやすい一方で、新人に指名が入りにくくなる点に気をつけます。パーソナルジムでトレーナーが担当を続ける契約の形なら、指名料を取らない型も考えられます。担当を選べるコースと選べないコースで、料金を分ける方法もあります。

ノーマリズムの調査の考察では、合計の額が同じでも、指名料として別に示すより、ランクごとのメニュー料金に含めるほうが抵抗が少ないかもしれない、と述べています。指名料を別に立てるか、ランク別のメニュー料金にするかも、あわせて考えておくとよいでしょう。

指名料の金額を決める手順

金額は、相場からではなく、自店の予約の数字から決めます。次の順に進めると、根拠を説明しやすくなります。

  1. 取る理由を1つ決める(上の表の「技術への対価」「予約の集中をならす」など)
  2. スタッフ別に、指名の予約の件数と、予約の枠がどのくらい埋まっているかを3か月分ほど並べる
  3. 指名料の分だけ、お客様1人あたりの支払いがどう変わるかを見る
  4. 指名が集中しているスタッフと、空きが多いスタッフで額を変えるかを決める
  5. 決めた額を、予約ページ・店内の料金表・スタッフの説明でそろえる

2の数字を見ると、指名料を上げるべきスタッフが見えてきます。たとえば、予約の枠がほぼ埋まり、指名で新規のお客様を断っているスタッフは、「予約の集中をならす」目的で指名料を上げる候補になります。逆に、枠に空きが多いスタッフの指名料を上げれば、予約はさらに入りにくくなるでしょう。

スタッフの枠の埋まり方は、サロンの稼働率の計算の方法で数字にできます。指名料はお客様1人あたりの支払いを少し上げるため、客単価の計算と上げ方の考え方とも関係します。

金額を変えるとき

すでに指名料を取っている店が金額を上げるときは、メニューの値上げと同じように、告知の時期と伝え方を決めてから変えます。いつも指名しているお客様ほど影響を受けるため、予約のときに初めて知る形は避けます。告知の時期や例文は、美容室・サロンの値上げの進め方が参考になります。

予約ページと店内での指名料の見せ方:総額表示と景品表示法

指名料を決めたら、お客様が予約する前に分かる場所に、税込の額で示します。ここでは、国税庁と消費者庁の資料をもとに、気をつけたい点を整理します。

税込の額で表示する(総額表示)

国税庁のタックスアンサー「No.6902『総額表示』の義務付け」では、事業者が消費者にあらかじめ価格を表示する場合に、消費税を含めた価格(税込価格)を表示することが義務付けられていると説明しています(根拠は消費税法第63条)。表示の媒体は問わないとされ、店頭表示やチラシ、新聞・テレビの広告が例に挙がっています。一方、価格を表示していない場合や、口頭で伝える価格は、総額表示の義務の対象ではないとしています。

同じページでは、総額表示として認められる書き方の例として、「11,000円(税込)」「11,000円(税抜価格10,000円)」「10,000円(税込価格11,000円)」などが示されています。予約ページや料金表に指名料を載せるなら、メニューの料金と同じく税込の額がひと目で分かる書き方にそろえます。

実際より有利に見せない(景品表示法)

消費者庁の「表示規制の概要」では、景品表示法が、価格などの取引の条件について、実際より著しく有利だと消費者に思わせる表示(有利誤認表示)を禁止していると説明しています。また、消費者庁の「表示に関するQ&A」によると、景品表示法でいう「表示」には、チラシや看板のほか、インターネットでの表示や口頭(電話を含む)による表示も含まれます。

指名料に当てはめると、メニューの料金だけを大きく見せて、指名料がかかることを予約の後まで伝えない見せ方は避けたいところです。個々の表示が法律に反するかどうかは事情によって変わるため、判断に迷う場合は、詳しくは専門家へ相談してください。

予約ページ・料金表の文例

次の文例は、指名料の条件を予約の前に伝えるための形です。金額は書き方を示すための例で、相場や推奨の額ではありません。

指名料(税込):スタイリスト 550円/トップスタイリスト 1,100円担当を指名しないご予約には、指名料はかかりません。店の都合で担当が変わった場合は、指名料をいただきません。

最後の1行は、指名なしで予約したお客様を、店の判断で指名料のかかるスタッフが担当したときの扱いです。ノーマリズムの調査で紹介された口コミには、指名料の要らない担当を頼んだのに、空いていた上位のスタッフが担当して指名料が加算された、という不満がありました。店の都合で担当を決めたときの扱いを先に決めて書いておくと、こうした行き違いを防げます。

表示の前に確かめること

  • 予約ページ・店内の料金表・LINE の案内で、指名料の額がそろっているか
  • 税込の額が分かる書き方になっているか
  • 「指名なしなら指名料はかからない」ことが書いてあるか
  • 店の都合で担当が変わったときの扱いが決まっているか
  • 初めてのお客様にも、予約の前に指名料が分かるか

指名料をスタッフの歩合に入れるか:3つの扱いと計算例

指名料をいただいたら、その売上をスタッフの給与にどうつなぐかを決めます。給与規程で言葉にしておかないと、毎月の計算でスタッフと食い違いが起きやすい部分です。主な扱いは次の3つです。

扱い仕組み向いている考え方
指名料を本人に渡すいただいた指名料の全額を、指名されたスタッフの手当にする指名料は本人の技術への対価、と説明したい
指名料の一定の割合を渡す指名料のうち決めた割合を本人に、残りを店の売上にする予約の調整など、店の手間の分も指名料に含めて考える
技術売上に含める指名料を技術売上に足し、ほかの売上と同じ歩合率を掛ける歩合の計算をひとつの形にそろえたい

同じ指名料でも、扱いによってスタッフに渡る額は大きく変わります。次の表は、指名料550円の予約が月に80件あったスタッフの例です。件数・割合・歩合率は計算の流れを示す例で、相場や推奨の値ではありません。

扱い計算スタッフに渡る額
本人に渡す550円 × 80件44,000円
一定の割合(50%)を渡す550円 × 80件 × 50%22,000円
技術売上に含める(指名の歩合率10%)550円 × 80件 × 10%4,400円

「技術売上に含める」扱いでは、指名料を上げてもスタッフの手取りはあまり増えません。スタッフに指名を増やしてほしいなら、指名料の扱いと指名の歩合率をあわせて見直します。

計算に使う指名料が税込か税抜かも、ほかの売上の扱いとそろえておきます。指名・フリー・店販に分けた歩合の計算表や、最低賃金・保障給・残業代の確認は、美容室の歩合制の計算方法で説明しています。

指名なしの予約を誰に入れるか:割り振りのルール

指名料の型を決めたら、指名なしで入った予約を誰が担当するかも決めておきます。この決め方は、スタッフの指名の数や評価にも影響します。代表的な決め方は次の4つです。

割り振り方向いている考え方気をつけること
成績のよい人に指名なしの新規のお客様を、再来につなげやすいスタッフに任せたい一部のスタッフに新規が集まり、ほかのスタッフが指名を増やしにくい
公平にスタッフの間で担当の数をそろえたい技術の差がある場合、お客様の満足に差が出ることがある
自分で決めた順番で育成中のスタッフに先に回すなど、店長の方針で決めたい順番の理由をスタッフに説明しておく
ランダムに特に決めずに振り分けたい月ごとに偏りが出ていないかを確かめる

新規のお客様をどう割り振ったかは、指名の数や再来率を評価に使うときの公平さにも関わります。評価のときの注意は、美容室の評価制度の作り方で扱っています。

Leporto で指名料と指名なしの割り振りを設定するには

経営改善型の予約管理システム Leporto では、スタッフの指名と指名料を設定できます。指名料はスタッフごとに円で入れるため、一律の型でもランク別の型でも同じ画面で設定します。

Leporto の管理画面(店舗設定のスタッフ情報の更新)で、指名料(円)の欄に 1100 と入れ、その下に指名なしメニュー振り分け順の欄と並行対応人数の欄があるところ(デモデータ)

お客様は、店舗の予約サイトや LINE から予約するときに、スタッフの一覧から担当を選びます。一覧には、スタッフごとの指名料と、「スタッフを指名しない」の選択肢が並びます。予約サイトに出る指名料が、税込の額で表示されているかを確かめておくと安心です。

お客様の予約画面のスタッフ選択。いちばん上に「スタッフを指名しない」の選択肢があり、その下にスタッフのカードが並び、それぞれに指名料(550円と330円)が表示されているところ(デモデータ)

指名なしの予約は、自動で割り振れます。割り振り方は、上の表の4つを、予約設定の画面で「実リピート率が高いスタッフを優先」(成績のよい人に)、「日次均等配分」(公平に)、「任意で割り振り順を設定する」(自分で決めた順番で)、「ランダム」から選びます。

Leporto の管理画面(予約設定)で、指名なし予約自動割り振り設定を「利用する」にし、ランダム・実リピート率が高いスタッフを優先・任意で割り振り順を設定する・日次均等配分の4つから割り振り方を選ぶところ(デモデータ)

歩合・給与の計算の機能は、美容室などでアシスタントの機能を使う場合だけあります。それ以外の業種の一般的な給与計算の機能はないため、指名料を歩合に入れる計算は、給与の計算に使っている方法で行ってください。

美容室で指名と予約の枠をどう組めるかは美容室向けのページに、まつげサロンでの使い方はまつげサロン向けのページにまとめています。

参考にした公的機関の資料

いずれも2026年10月18日に参照しました。

よくある質問

指名料の相場はいくらですか?

指名料の金額について、国や業界団体がまとめた統計は見つかりませんでした。他社の記事の「相場」をそのまま使うより、スタッフ別の指名の件数と予約の枠の埋まり方から、自店の額を決めることをおすすめします。

指名料は税込で表示しなければいけませんか?

国税庁のタックスアンサーでは、事業者が消費者にあらかじめ価格を表示する場合、税込の価格を表示することが義務付けられていると説明しています。予約ページや料金表に指名料を載せるなら、メニューの料金と同じく税込の額が分かる書き方にそろえてください。自店が対象になるかなど細かい判断は、税務署や税理士などの専門家に確かめてください。

初めてのお客様からも指名料を取ってよいですか?

取るかどうかは店の決め方次第です。ただし、初めてのお客様は、指名料がかかることを知らないまま予約することがあります。予約のときにスタッフを選ぶ画面や料金表で、指名料の額と「指名なしならかからない」ことを示しておきます。

指名料はスタッフに全額渡すべきですか?

決まりはありません。全額を本人に渡す、一定の割合を渡す、技術売上に含めて歩合率を掛ける、の3つが主な扱いです。どれにするかを給与規程に書き、スタッフに説明しておきます。

まつげサロンやパーソナルジムでも指名料は必要ですか?

必要かどうかは、指名を取る理由があるかで決まります。担当を続ける形が前提の店なら、指名料を取らない型でもかまいません。指名が一部のスタッフに集まって予約を受けきれない場合は、そのスタッフだけ指名料をいただく形も選べます。