休眠客の掘り起こし方:来店周期から対象を決め、連絡し、戻ったかを数える
休眠客の掘り起こしは、「誰に送るか」を先に決めると結果が出やすくなります。メニューごとの来店周期を出し、その何倍の期間があいた方を休眠客とするか、店で線を引いてください。連絡は、来店回数の多い方から、担当者の名前で 1 回だけ送ります。送ったあとは、30 日以内に何人が予約し、来店したかを記録して、送らなかった場合と比べます。この記事では、来店周期の計算、休眠の線を引く表、対象から外す人、連絡の順番、戻り率の記録表、失客を防ぐ仕組みを順に取り上げます。案内の文面は別の記事にまとめたので、ここで扱うのは「対象の決め方」と「数え方」が中心です。
休眠客の意味と、失客との違い
休眠客は、ふだんの来店の間隔を大きく過ぎても、まだ次の来店がないお客様です。来なくなった理由がはっきりしないため、きっかけがあれば戻る見込みが残っています。失客は、店で決めた日数を超えて来店がなく、店を離れたとみなすお客様です。休眠は失客の手前の段階と考えると、連絡のしかたを分けやすくなります。
| 段階 | 状態 | 店がすること |
|---|---|---|
| 通常 | 来店の間隔の中にいる | 何もしない(次回予約があれば十分) |
| そろそろ | 間隔を少し過ぎた | 再来の案内を送る |
| 休眠 | 間隔を大きく過ぎた | 掘り起こしの案内を 1 回送る |
| 失客 | 店で決めた日数を超えた | 個別の案内は止める。失客の数として記録する |
失客の割合(失客率)の計算は美容室のリピート率の計算方法で扱っています。この記事では、失客になる前の休眠の段階で、誰にどう連絡するかを考えます。
来店周期の計算:メニュー別に中央値で出す
休眠の線は、来店の間隔(来店周期)をもとに引きます。周期はメニューで大きく違うため、店全体で 1 つにせず、メニューごとに出してください。カットだけの方と、毎回カラーをする方を同じ日数で見ると、まだ周期の途中の方まで休眠に数えてしまいます。
手順は次のとおりです。
- 直近 1 年の来店の記録から、2 回以上来たお客様を選ぶ
- 来店ごとに「前回の来店日から今回の来店日までの日数」を出す
- その日数を、前回の来店のメニューごとに集める
- メニューごとに、日数を小さい順に並べ、真ん中の値(中央値)をとる
平均ではなく中央値を使うのは、まれに 1 年ぶりに来た方がいても、数字が大きく引っ張られないためです。たとえば、カラーの方の間隔が次の 7 件だったとします(仮の数字です)。
| 並べた間隔(日) | 35・38・42・42・45・49・120 |
|---|---|
| 中央値(4 件目) | 42 日 |
| 平均 | 53 日 |
120 日の 1 件があるだけで、平均は 53 日に伸びます。53 日を周期にすると、案内が遅れがちになります。中央値の 42 日のほうが、ふだんの間隔に近い値です。
件数が少ないメニュー(目安として 10 件未満)は、中央値が安定しません。近いメニューとまとめて出すか、担当スタッフの感覚とあわせて決めてください。お客様 1 人ずつの周期の出し方は、美容室の顧客管理の「来店周期を出して、次回の目安を決める」で例を挙げています。
休眠の線を引く表:周期の何倍で区切るか
周期が出たら、そろそろ・休眠・失客の線を、周期の何倍かで決めます。編集部の考え方としては、次の倍率から始めて、店の数字を見ながら直すことをおすすめします。業界で決まった基準や、公的な統計の基準はありません。
| 区切り | 周期に対する倍率 | 意味 |
|---|---|---|
| 再来の案内 | 1 倍 | ふだんなら来ているころ |
| 休眠の線 | 1.5 倍 | 何かの理由で間があいている |
| 失客の線 | 3 倍 | 店を離れた可能性が高い |
この倍率でメニューごとに日数を出すと、次のような表になります(日数は仮の数字です。自店の中央値に置き換えてください)。
| メニュー | 周期(中央値) | 再来の案内 | 休眠の線 | 失客の線 |
|---|---|---|---|---|
| カラー | 42 日 | 42 日 | 63 日 | 126 日 |
| カット | 60 日 | 60 日 | 90 日 | 180 日 |
| ネイルの付け替え | 28 日 | 28 日 | 42 日 | 84 日 |
| (自店のメニュー) | __ 日 | __ 日 | __ 日 | __ 日 |
最後の来店のメニューで、そのお客様がどの線を越えたかを見ます。休眠の線から失客の線までの間にいる方が、掘り起こしの中心の対象です。
1 回しか来ていない方は分けて考える
初めて来たあと 2 回目がない方は、まだ店の周期に乗っていません。同じ休眠の線で拾ってもかまいませんが、文面と数え方は分けてください。常連の方には「お久しぶりです」が合いますが、1 回だけの方には「前回の仕上がりはいかがでしたか」のように初回の来店にふれるほうが自然です。初回から 2 回目に進む割合の上げ方は、美容室のリピート率の計算方法の「どこで離れているかを段階に分けて見る」で説明しています。
失客の線は分析の設定とそろえる
失客の線の日数は、売上や再来の分析で「失客」とみなす日数と同じにしておきます。連絡に使う日数と、数字を見るときの日数が違うと、配信のあとで失客が減ったかを正しく比べられません。
対象から外す人
線を越えた方を全員に送るのではなく、次の方は対象から外します。予約済みの方に「お久しぶりです」と届くと、店が予約を把握していないように見えるためです。
| 外す人 | 理由 |
|---|---|
| 次の予約がすでに入っている方 | 案内の必要がない |
| 案内の停止を希望した方 | 希望に反して送らない |
| メールの案内に同意していない方(メールで送る場合) | 広告のメールは原則として同意が要る(後の節を参照) |
| 予約をお断りしている方 | 予約を受けない方を呼び戻さない |
| 引っ越し・体調などの事情を聞いている方 | 事情に合わない案内になる |
| 前回の掘り起こしの案内から間がない方 | 同じ案内を重ねない |
回数券やサブスクの残りがある方は、外さずに別の文面にします。「回数券があと 3 回分残っています」のように、残りを知らせる一文のほうが、新しいメニューの案内より役に立ちます。
誰から連絡するか:優先順位の決め方
休眠客が多い店では、全員に同じ案内を送るより、戻ったときの影響が大きい方から手をかけます。来店回数と、担当スタッフが今もいるかで分けると決めやすくなります。
| 優先 | 対象の例 | 連絡のしかた |
|---|---|---|
| A | 来店 5 回以上、担当が在籍している | 担当の名前で、1 人ずつ書いた LINE かメール。前回の施術にふれる |
| B | 来店 2〜4 回 | 相手を絞った配信。担当の名前と前回のメニューを差し込む |
| C | 来店 1 回だけ | 相手を絞った配信を 1 回。初回の来店にふれる |
| 別扱い | 担当が退職した方 | 新しい担当の名前で、引き継いだことを伝える |
担当が辞めたあとに来なくなる方は少なくありません。担当の退職がわかった時点で、その方のお客様を書き出し、別のスタッフが引き継いだことを伝えると、休眠になる前に手を打てます。
連絡の手段と順番:LINE・メール・はがき・電話
連絡の手段は、お客様と店がどの方法でつながっているかで決まります。手段ごとの向き不向きは次のとおりです。
| 手段 | 向く相手 | 気をつけること |
|---|---|---|
| LINE | 店の LINE 公式アカウントと友だちで、来店の記録とひもづいている方 | ブロックされると、予約のリマインドも届かなくなる。送る回数をしぼる |
| メール | メールの案内に同意している方 | 広告のメールは特定電子メール法の決まりに沿う(店名・連絡先・配信を止める方法の表示など) |
| はがき(DM) | LINE もメールもつながっていない、住所を預かっている方 | 郵送の費用と手間がかかる。住所を案内に使うことを、預かるときに伝えておく |
| 電話 | 優先 A の方で、担当との関係ができている方 | 相手の時間をとる。売り込みにせず、近況をうかがう程度にする |
順番は、次の流れをおすすめします。
- 休眠の線を越えた時点で、つながっている手段(LINE かメール)で 1 回送る
- 優先 A の方で 2 週間ほど反応がなければ、担当が電話か 1 対 1 のトークで一度だけ近況をうかがう
- それでも反応がなければ、掘り起こしの案内はそこで止める
- その後は、誕生月の案内のように、もともと送る理由のある連絡だけを続ける
- 失客の線を越えたら、個別の案内は止める
掘り起こしの案内を何度も送ると、ブロックや配信停止につながります。1 人に 1 回と決め、送った日を記録しておきましょう。誕生月の案内は、休眠の方にも自然に連絡できる数少ない機会です。生年月日や誕生月は、カウンセリングシートで使い道を書いて預かっておきます。
文面は、来なくなった理由を責めない書き方にします。前回の施術の内容、新しいメニュー、空いている日のうち 1 つにふれ、最後に案内を止める方法を添えるのが基本の形です。掘り起こし・再来の案内・誕生月の文例は、サロンのLINE配信 例文にまとめています。
戻ったかを数える:戻り率の記録表
掘り起こしは、送った数ではなく、戻った数で見ます。送るたびに、次の表を 1 行ずつ埋めてください。
| 項目 | 書く内容 |
|---|---|
| 送った日・段階 | 例:10 月 1 日、休眠(優先 B) |
| 手段 | LINE/メール/はがき/電話 |
| 送った人数 | 対象にした人数 |
| 届いた人数 | ブロック・配信停止・宛先不明を除いた人数 |
| 30 日以内に予約した人数 | 送った日から 30 日以内に予約が入った方 |
| 30 日以内に来店した人数 | 予約のうち、実際に来店した方 |
| 戻り率 | 30 日以内に来店した人数 ÷ 届いた人数 |
| その後の 2 回目 | 戻った方のうち、次の周期の間にもう一度来た人数 |
戻り率の式は次のとおりです。
戻り率(%)= 送った日から30日以内に来店した人数 ÷ 届いた人数 × 100
数える期間(ここでは 30 日)は、毎回同じにします。期間を変えると、配信どうしを比べられなくなります。
送らなかった方と比べる
休眠の方の中には、案内がなくても季節の行事や用事で自然に戻る方がいます。案内の効果を確かめるには、対象の一部に送らずに残し、同じ期間に自然に戻った割合と比べます。たとえば、対象のうち 10 人に 1 人には送らない、という決め方です。送った方の戻り率から、送らなかった方の戻り率を引いた差が、案内で増えた分の目安です。人数が少ないうちは差がぶれるので、何回かの配信を合わせて見てください。
戻ったあとに続いているかを見る
1 回戻っただけで、また休眠に戻る方もいます。戻った方の「その後の 2 回目」と、店全体の再来の割合(リピート率)、1 人のお客様が通っている間に使う金額の合計(LTV)の動きをあわせて見ると、掘り起こしが店の売上に残っているかがわかります。リピート率の期間の決め方と計算表は、美容室のリピート率の計算方法が参考になります。
失客を防ぐには:休眠させない仕組み
掘り起こしより手間が少ないのは、休眠になる前に次の来店を決めてもらうことです。失客を防ぐために、次の 3 つを先に整えておくと、掘り起こしの対象そのものが減ります。
- 会計のときに次の予約をおすすめする。声かけの例は次回予約率の計算方法と取り方にまとめています
- 来店後のお礼と、周期の少し前の「そろそろ」の案内を、日を決めて送る
- 担当が辞めるときは、担当していたお客様を書き出し、引き継ぐスタッフを決めて伝える
予約の取りにくさが理由で来なくなる方もいます。電話だけでなく、LINE やネットで 24 時間予約を受けられるようにしておくと、思い立ったときに予約してもらえます。
案内を送るときの法律の注意
休眠の方への案内には、店が預かった連絡先や来店の記録を使います。次の 2 つの法律に気をつけてください。
個人情報保護法では、個人情報を扱う店は利用目的をできる限り特定し、その範囲で使うこととされています(法第 17 条・第 18 条)。連絡先を預かるときに、カウンセリングシートなどで「ご来店のご案内やお知らせにも使います」と書いておくと、案内に使うことをお客様に伝えられます。個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」の「3-1 個人情報の利用目的」に考え方が載っています。
メールで広告や宣伝の案内を送る場合は、特定電子メール法の決まりがあります。総務省の資料では、広告・宣伝のメールは原則として事前に同意した相手にだけ送ること、送信者の名前や、受信を拒否できることとその連絡先などを表示することが説明されています。メールの注意点は、サロンのLINE配信 例文の「メールで送る場合の注意」にもまとめました。
ここに書いたのは一般的な注意です。自店の場合にどう当てはまるかは、総務省・個人情報保護委員会の資料で確かめ、判断に迷う場合は弁護士などの専門家へご相談ください。
Leporto で休眠客を絞り込み、配信し、数えるには
Leporto は、予約・顧客・カルテ・売上と集客の分析をまとめて管理できる、サロン向けの予約管理システムです。来店の記録をもとに相手を絞り、LINE やメールで案内を送り、その後の数字を分析の画面で確かめられます。
相手は、管理画面のセグメントで条件を組み合わせて決めます。たとえば「来店回数が 2 回以上」で「最終来店日が 60 日前」の人のように絞れます。「最初の来店でこのメニューを受けた人」のような細かい切り方も可能です。決めたセグメントに、シナリオ配信・毎月の繰り返し配信・日時を決めた配信で案内を送れます。送る手段は LINE とメールから選べ、誕生日の配信もメールと LINE の配信の設定でできます(表示はデモデータ)。

シナリオ配信では、対象の人数、進行中・完了・停止の人数と、ステップごとの送信済み・失敗の件数を確かめられます。届いた人数を記録表に書くときの手がかりになります(表示はデモデータ)。

配信のあとは、管理画面の「アナリティクス」で、実リピート率(30・60・90・120・180・365 日)、失客数(失客とみなす日数は店で設定)、LTV の実績と予測を見られます。LTV はスタッフ、来店のきっかけ、初回来店時のメニューで絞り込めます(表示はデモデータ)。

配信の設定は、ChatGPT のプラグインから ChatGPT に指示して行うこともできます。一方、案内のメッセージの送信状況と予約・来店を突き合わせた戻り率は、この記事の記録表のように店で数えてください。配信の機能は LINE 連携の機能、分析の項目は 分析の機能 のページで紹介しています。分析の機能は、ライトプランでは使えません。
参考にした公的機関の資料
いずれも 2026 年 10 月 18 日に参照しました。
- 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」 https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/
- e-Gov 法令検索「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」 https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000026
- 総務省「特定電子メールの送信等に関するガイドライン」 https://www.soumu.go.jp/main_content/000517382.pdf
よくある質問
休眠客は何日来ていない人のことですか?
決まった日数はありません。来店の周期がメニューで違うため、店ごと・メニューごとに決めます。この記事では、周期の中央値の 1.5 倍を休眠の線、3 倍を失客の線にする考え方を紹介しました。まずこの倍率で始め、戻り率を見ながら直してください。
掘り起こしの案内に割引はつけたほうがいいですか?
つけなくてもかまいません。割引をつけると戻る方が増えることはありますが、割引がないと来ない習慣につながることもあります。つける場合は、期限を決め、送らなかった方と戻り率を比べて、割引の分に見合うかを確かめてください。
何回まで連絡してよいですか?
掘り起こしの案内は 1 人 1 回をおすすめします。優先度の高い常連の方だけ、反応がなければ担当が一度だけ近況をうかがいます。その後に続けるのは、誕生月の案内のように、もともと送る理由のある連絡だけです。
休眠客が多すぎて、手が回りません。
全員に同じ手間をかける必要はありません。来店回数の多い方と、担当が在籍している方から 1 人ずつ連絡し、ほかの方は相手を絞った配信にまとめます。あわせて、会計のときの次回予約と来店後の案内を整えると、新しく休眠になる方が減ります。
戻り率は何%を目指せばよいですか?
出典のある目安の数字は見つかりませんでした。店や地域、休眠の線の引き方で大きく変わるため、他店の数字と比べる意味は小さいと考えます。自店の配信どうしを、同じ期間(たとえば 30 日)で比べ、送らなかった方との差が広がっているかを見てください。
